第4話 嫌じゃなかったかな?

 え? え?

 菅原さんが私のこと“スズ”って呼んだ? え? なんで?


「固まっちゃいましたね」

「貴方の言う通りにしたら気まずくなっちゃったじゃない‼︎ なんだかすっごく恥ずかしいし……」

「なーんでこの顔のときにスズは固まってるんだか。ほーら、スズ! 戻ってきな」

 モモの言葉に私の思考は復活しました。私ってモモに助けてもらってばっかりだなぁ。そんなことより、さっきのは?

 菅原さんはちょっと赤くなって本読んでるし……

 私の混乱を見かねたのか、モモが近くに来て説明してくれました。

「さっきのはね。菅原先輩がスズとの間に距離を感じるっていうから」

「ちょ、ちょっと」

 菅原さんの反応見てたら本当なんだなぁ、って確信が持てました。

「まぁまぁ、いいじゃないですか。本当のことなんですし。ちゃんと言っとかないと本当に突然の謎行動ですよ?」

 菅原さんが反論しなくなったところを見ると本当に本当のことだって確信が持てる……

「それで、あだ名で呼び合うようにしたら? って私が言ったの」

 確かにモモをモモって呼ぶようになってから仲良し度合いが急成長したなぁ。

「え? 呼び合う?」

「そ。スズのときみたいに菅原先輩にあだ名をつけてあげたのです‼︎」

 先輩と後輩の立場の逆転を目にした瞬間でした。

「菅原先輩の名前の“千”の字から先輩のあだ名は“ユキ”先輩に決定しました〜‼︎」

 菅原さんもモモの押しに負けちゃったんですね。

「ほ〜ら。ユキ先輩もスズのこと呼んでくれたんだから、スズも」

「え? あ、えっと。これからもよろしくお願いします。ユキせ……さん」

 やっぱり恥ずかしいなぁ。モモのときみたいに押しきられちゃったけど菅原さん……えっと、ユキさん? 嫌じゃなかったかな?

「えっと、スズ? 私のこと、さん付けじゃ無くて良いのよ?」

「あ、すいません。ユキ……さん」


 私の言葉の後、ユキさんがなにか言ったように見えましたが声が小さく、うまく聞き取れませんでした。モモがちょっと残念そうな顔をしてユキさんを見てたのには気づきました。やっぱり、私に呼ばれるのは嫌だったのかな。



「もう遅いし、今日は解散にしましょう」

 しばらくしてから、ユキさんの提案で今日は解散になりました。まだ最終下校じゃないけどユキさんのことだから早めの行動かな? それとも、私のこと……あ。

「モモ。ごめん先行ってて。ちょっと忘れ物しちゃって」

「教室? 着いてくよ?」

「それだと遠回りになっちゃうでしょ。昇降口あたりで待ってて。すぐに行くから」

「ん、分かった。じゃあ先行ってるね。

「えっと、ユキさんも、さようなら、です」

「え、ええ。さようなら」

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