第14話 元カノとの再会
二人で食事中。
先ほどのこともあったからか、周りからの視線を多く感じる。
半分は先ほどのトラブルを見ての好奇心、もう半分は紗季の見た目によって集められた視線だろう。
紗季は入学当初から学部を超えて有名だった。
しかし、本学キャンパスに紗季が来ることはあまりないため、初めて見る人が多いのだろう。
まぁ、芸能人が同じ大学に在籍してたらそら見るよな。
改めて紗季の容姿を確認していると、紗季と目が合った。
「何よ。じろじろと見ちゃってさ」
「なんでもねぇよ」
照れくさくなった俺は、咄嗟に目線を外す。
それでも紗季からの視線を感じ、気まずくなる前に話題を変えた。
「この杏仁豆腐やるよ。好きだろ?」
「えっ、いいの?ありがとう!」
紗季は一瞬で目を輝かせて、杏仁豆腐をすぐに食べ始める。
紗季が杏仁豆腐をパクパクと食べているのを見ると、思わず口から笑みがこぼれてしまう。
「それで、今日はどうしてこんなに機嫌がいいわけ?正直、怖いんだけど」
紗季が杏仁豆腐を食べ終わると、口元を拭きながら訊いてくる。
「よくぞ聞いてくれました。なんと……。」
「なんと?」
「少女がついに口をきいてくれたのです!」
「へー。よかったじゃない」
「ありがとう!」
思い出すだけでテンションが上がってしまった俺は、紗季に手を出して強制的に握手をする。
紗季も紗季で、嫌がりそうにしながらも手を出してくれたことから、心の底では祝ってくれていることだろう。
「だからそんな機嫌がいいのね。ずっとその少女のことばかり考えたしねー」
紗季がじとーとした目でこちらを見てくる。心なしか、声もじとーとしていた。
よしてくれよ、照れるじゃないか。
「ああ、寝ても覚めても少女のことしか考えてなかったからな」
「はは、きもっ」
紗季が笑顔で言ってくる。
やっぱり、紗季は笑顔が似合うな!
「でも、その恩恵を私が授かるのっておかしくない?何かしたっけ?」
「紗季が応援してくれたから、この結果に行き着いたんだよ。ありがとう」
紗季に直接的な謝意をぶつけると、顔を背けた。
赤くなった横顔から推測するに、恥ずかしがっているのだろう。
「あの日のことは忘れてよぉぉぉ!」
恥ずかしがっている理由は、予想とは違ったみたいだ。
◆◇
食事を終えた俺たちは、学食が混んできたため片づけをし始めた。
トレーを学食のおばさんに『ごちそうさまでした』と言いながら、返却する。
次の講義が何だったかと考えながら歩いていると、出口に人だかりができていた。
「なんだろうな、あれ」
「少し見ていきましょうか」
野次馬根性が爆発した紗季と二人で、人だかりに向かうと目を疑うような状況がそこにあった。
「かわいいねー、君。一緒にカフェでも行かね?奢るよ」
「やべー、さっきのモデルとタメを張れるほどかわいいくね?」
「それなー」
人だかりの原因の片割れである、先ほどのチャラ男。
どうやら挫けずにナンパを続けているらしい。
だが今はそんなことはどうでもいい。
今、重要なのはナンパされている女子の方だ。
「ごめんなさい。あなたたちに微塵も興味はないんです」
少女は嫌悪感を顔に全面的に出して拒絶する。
俺はその少女を驚愕の眼差しで見る。
白い肌にきれいな茶色の髪。
その肩にかかるほどの髪は内側にカールがされていて、どうしてもかわいいと思わさせられる。
それだけではない、くりっとしたまんまるい目に、桜色の唇。すらっとした鼻筋、ちょうどよく低い身長、大きな胸。
まるで神が男受けする要素をまとめて入れたようなその女性を、俺は見たことがある。
胸の奥底からざわざわと、心が鳴っている。
ひどく悪寒がする。
ここにいてはいけない。
「紗季、早く次の講義に向かおう!」
隣にいる紗季に言葉を投げかけながら、紗季の方を見ようとした刹那。
一瞬、ほんの一瞬だが、その女性と目が合ってしまった。
「賢太……くん……?」
俺は一年ぶりに、元カノと再会した。
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