第2話 そのときは突然に
「またあの夢か」と進は、ベットの上で呟いていた。
もう忘れたい高1の冬の記憶だった。
しかし、そんな日々ともおさらばだ
進は、妙に高鳴る自分の鼓動を感じた。
なぜなら今日は、新学期のスタートだからだ
◆◇◆◇◆◇
進の通学は、自転車、バス、電車のほぼすべての交通機関を利用していることから通学にはどうしても1時間かかってしまう。
そんな日々に少し鬱を感じながらも、もうすぐ目の前まで来ていた。
新しい生活への期待からか不意に拳に力が入る。
「何 焦ってんだ俺 」と心の声が漏れそうになる。
バスから降りる、そしてすぐに、新しいクラスが掲示されているところへいった。
誰かの視線を感じたが、そんなの気にしている暇などない。
そう、気にしている暇などないのだ。
せかせかと足を急がせ、新しいクラスへと向かい、席に着くと上から声がした。
「あっれれー、おっかしいなー
頭の硬いヤツが同じクラスにおるなー」
「どこにそんな頭の硬いヤツがいるんだ
まさか俺のことじゃないよな」
と進が皮肉混じりに話した相手は、高橋航輝。
去年同じクラスであったものの、航輝のチャラさが進には耐えきれず
自分の方から避けていた。
「そのエセ関西弁本当にイライラするからやめてくれないか」
その顔を思い切りゆがんだ顔に航輝は満足した顔で
「わあかった、わあかった、もうやめるから許してよぉ
インターアクト部の副部長さぁん」
全く悪びれる様子もない航輝に対して呆れていると、
チャイムが教室に響きわたたった。
周りを見渡すともうみんな席についていた。
ざわざわと声がした。少し軽蔑や引いた視線のようなものを感じた。
やってしまった。と思ったが、どうも今までの航輝との会話ではなく、
[インターアクト部の副部長]の方に対してのざわつきであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
進は、夕方の日差しに目を細めつつ、いつもの廊下を歩いて
教室に入る
そこには、筆で大きく【インターアクト】と書かれている。
なぜ英語が筆でかかれているかは、さておき中にいる部員のためにも
音を立てずにそっと戸を開けると
「また、アンタのせいでわたしの高貴で気品あるキャラが崩れそうになったじゃない!」
「え〜そんなこといわれても〜私は〜はっきりと先輩の友達にいつものエリィ先輩を話そうとしたまでで〜」
そこには、キャラ崩壊している、金髪の髪を腰の辺りまで伸ばして
学校1の美女とまでうたわれている2年
エリィ サクス 通称エリィと
これまで進が見てきた中で裏表が最も激しいツインテールの1年
川合 美怜
のふたりがいつもの様子で小言で言い争っていた。
そんなふたりに目もくれず、凛々しくポニーテールが特徴の佇まいをしている、
この人こそ、このインターアクト部を率いている3年で
部長の 水野 香里奈である。
「こんな状況で、よく次の修学旅行の企画書かけますよね」
そういわれた香里奈は、何か問題でも といわんばかりの余裕な様子だ。
「少し気に触るが大したことじゃないよ。君のその人生終わったみたいな心の暗がりと比べればね」
進はドキッと槍で刺されたかのように感じた。
もう1年の付き合いになるがどうもこの真をついてくるところがなれない。
「その様子だと当たりのようだな 何があったか会議が終わったらどこかで話さないか」
その男前すぎる言い草に首を横に振ることはできなかった。
すると後ろから
「進、小野塚さんはどうしたのかしら?」
と今までの会話がなかったかのように、長い髪の毛をさらり
と振り返ったエリィが不思議そうに尋ねてきた。
流石に俺と菊穂、いや小野塚との間に何があったのかをここで言うには筋違いにも程があると思い、
「いや、俺はどこにいるか知らないな」
「あら、そう」
と軽く返されたが、この場にいる一人だけは目の色を変えていることに気づいたのは、
言うまでもない。
この空気を断ち切るかのように水野は、
「休憩はここまでにして、1名かけているが、今度の修学旅行の件の話しをしよう」
「了解です」
「わかりましたわ」
「了解で〜す」
と三者三様の返事をし、ある1人を残して話し合いが始まった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
話し合いは、とても順調に進んでいた。
「では、私達 まあ長田、小野塚、エリィの3名で行うのだが修学旅行では、是非とも頑張って欲しい 頼めるか?」
「わかりました」
「精一杯、やらせていただくわ」
と二人の了解が得られたその時、
ガラガラとほそぼそと戸が開けられた。
そこには、急に視線を向けられ、あたふたしている菊穂の姿があった。
「遅れてすみません」
「まあ、小野塚のことだ。何か事情があったんだろう」
と諭すように聞かれた菊穂は、
「はい、実は私、修学旅行の件ですが委員会とダブルブッキングしてまして」
とはっきりした答えに、
「では、インターアクト部としての仕事はどうするのかしら?
インターアクトの仕事は、委員会と掛け持ちして出来るような甘い仕事ではないことはご存知でしょう?」
とエリィは、美怜とのじゃれ合いから標的を変え、冷たく言い放った言葉の対し
今まで部外者扱いを受けていた美怜は、
「まあ〜わたしは〜菊穂先輩だったらなんとかやれる気がしますけどね〜」
「いや、部外者扱いされてたからっていい加減なこと言うのはよせよ」
(いや、この女俺とエリィに仕事押し付けて困ってるの見ていたいだけだろ)
流石にそんなことはさせまいといった一言だったが、
香里奈先輩には、別の意味に捉えられたらしく
「まあ、菊穂はこの前のようにならないようにくれぐれも気をつけてやれば大丈夫だろう。」
その言葉を聞き、総意で菊穂の参加を認めざるを得なかった。
しかし、エリィだけは少し物悲しい顔をしていたが、
それに気づく者は、いなかった‥‥‥‥
◇◆◇◆◇◆◇◆
「では、この修学旅行の件に関しては、3人に任せた。」
その言葉を最後に、今日の部活が終わり帰路についたとき
後ろから、声が投げかけた。
「まさか、私との約束を忘れてないだろうね」
先の威厳のある態度とは打って変わって、
だいぶ女子高校生らしい嫉妬の表情を見せた香里奈に対して、軽くうなずき、
喫茶店へと向かおうとしたが、進はふと振り返り
「変な想像されるとあれなんで、香里奈先輩ここは時間をずらしましょう。」
と香里奈に告げた。
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