第6話 ミルクキャラメル


今日はミルクキャラメルを渡す最後の日。


毎月22日はミルクキャラメルをプレゼントする日。


二人が初めて出会った日。


付き合い始めた日。


二人の出会いの日、賭け事をした。


負けた僕は彼女のお願いを何でも聞くことになった。


お願いは、ミルクキャラメルを買うこと。


22日を忘れないように、いつも22日にプレゼントすること。


100個ね。


今日がちょうど、100か月目にあたる。


8年か。


あっという間だったな。


今日で二人の約束もおしまい。


もうミルクキャラメルは買えないな。


待ち合わせ場所に行く。


お気に入りの公園で会い。


お気に入りのレストランに行く。


デザートを食べ終える。


ここで渡しておしまい。


日をまたぐ、ぎりぎりに渡そう。


あと5分か。


ミルクキャラメルを渡す。


「今までありがとう」


「こちらこそ今までありがとう」


「ねぇ、今食べてもいい?」


「どうぞ」


切ない。


泣きそうになって顔を伏せる。


「あっ、コレは何?」


「どうしたの?」僕は聞き返す。


「一粒足りない」


「えっ、うそ。本当だ。一粒少ない」


「はい、残念ね。23日よ。100個渡せなかったわ」


「えっ!? ちゃんと渡しただろ」


「一粒少なかったから数えないの。約束を破ったバツは何にしようかな」


頬に人差し指を当てながら、意地の悪そうな笑顔を見せる。


「よし、ミルクキャラメルを買うこと、22日を忘れないように、100個」


8年前と変わらないセリフ、口調、笑顔で彼女はそう言った。


神様のイタズラか彼女のイタズラか。

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