第5話 6年越しの初恋
「6年間好きでした」
「久しぶりに会っていきなりそれなの」
彼女は相変わらずの優しい笑顔で僕を笑った。
「彼女はできたの? 見ない間にカッコよくなっちゃって」
「できてないよ。どうすればできるかな」
「そうだねぇ。それよりね。焦らないことだね」
「あせらない?」
「私は中学校時代から何人、何十人って付き合ってきたけど、一人の人だけとずっと付き合っている人も羨ましく思うの」
彼女は頷きながら一人で話を続ける。
「だからアナタもここまで彼女がいないなら、最初に付き合う人と結婚までしてほしいな」
実感は沸かないが、この言葉に救われた。
「さて、無理して時間作ったんだから、他に言いたいことって無いの? まさか昔の愛の告白だけってことはないよね」
僕の中で重要だと思っていたことを簡単に口に出す。
でも軽く扱っているわけじゃない。
そんな優しさがある。
気が楽になる。
あぁ、きっと中学時代の僕はこの娘のここが好きだったんだなぁ。
「うーん、君が初恋の人だったよ」
「何それ。ありがとう」
照れたような。
慣れているような。
どちらにも取れる彼女の笑顔だった。
「あっ、ダーリンが来た。あれ、あのバイク」
僕の後ろの道路を指さす。
「じゃぁね。彼女づくり頑張ってね。私の夢を叶えてね」
何か言わないと。
「そうだね。頑張る。あ、でも、もう会うこともないよね」
「そうだね。きっと会わないね」
また微笑んでくれた。
「じゃぁ最後に『またね?』って首をかしげながら別れよう」
「何それ? じゃぁ、私はもう行くね。またねっ」
右手を小刻みに振りながら彼女は首を傾げた。
「またね。ありがとう」
首を傾げながら、可笑しくて笑った。
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