第3話 待ち伏せ


『今日も仕事大変だったよ。今まで残された』


 二十二時になる少し前に、彼女からLINEが届いた。


『おつかれさん。まだ会社?』


すぐに返信する。早足になる。


『うん、まだ地下鉄についてないの』


数分後に届いた。


最近、彼女は夜遅くまで仕事がある。


なかなか会えない。


何もしてやれないのが少し寂しい。


今日は彼女の誕生日なのだ。


明日、彼女の誕生日を祝う約束なのだが、当日に祝いたい。


約束はしていなかったが、彼女の会社の近くまで来ていた。


花束と彼女の好きなお菓子を持って、地下鉄の傍で待っていた。


驚かす気や喜ばす気よりも今日はねぎらいの態度を表したくて待っていた。


ただ単に一目会いたかっただけなのかもしれない。


「ほんと、ごはんごちそうさまでした」


遠くから彼女の声が聞こえた。


誰かと一緒だと、照れくさいから隠れて確認をした。


「それくらい良いよ。またディナー誘うから」


「会社の食堂で『ディナー』はないでしょう」


二人は僕の前を通り過ぎて行った。


『そっか。明日は何時から大丈夫そう?』


彼女たちが駅に入ったのを確認して、LINEの続きを送る。


すぐに返信が届いた。


『お昼過ぎかな。どこに連れて行ってくれるの?』


恋愛も最低限のルールがある。


今日は僕が悪かった。

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