第26話相談相手に

 武具屋で《聖女の欠片1/3》というアイテムを入手。

 マリアが手にしたら事件が起きた。


 ◇


 色んな天の声が聞こえてきた。


 ☆《《聖女の欠片》が1/3解放されました》

 ☆《マリアの職業が“神官”から【聖女候補】にクラスアップしました》

 ☆《ハリトの第二職業が解放。第二職が【聖女候補の導き手】になりました》

 ☆《運命チャレンジが解放されました。【聖女候補戦】が開幕しました》


 ☆《『《萬屋本店》に行って《聖女の欠片1/3》を見つけよう』を完了しました》

 ☆《特別経験値が付与されました》

 ☆《ハリトのメインレベルが1上昇しました》

 ☆《スキルポイントを5ゲットしました》

 ☆《『ハリトの恩恵』でメンバー『マリア』メインレベルが1上昇しました》

 ☆《『マリア』はスキルポイントを4ゲットしました》


 今までの天の声の中でも、トップクラスに急激なことが告げられた。

 しかも変化はそれだれではなかった。


「ハ、ハリト君……これが天の声なんですか? 聖女候補が何とか、と聞こえましたが?」


 何とマリアにも今の声が、聞こえていたのだ。

 文字は見えないが、聖女に関連したものだけが、聞こえたらしい。


「うん、そうだよ。オレもちょっとビックリしている」


「私もです。どういう意味でしょう?」


「とにかくマリアのステータスを確認してみるね!」


 彼女のステージ記号をタッチして、表示させる。

 二人で確認していく。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:マリア(♀16歳)

 Up!職業:神官→聖女候補

 UP!メインレベル12→13

 □スキル

 ・接近戦(杖)レベル1

 └強打アッタク


 □回避レベル2

 ├集中

 └ひらめき


 □神聖魔法レベル5

 ├回復系

 ├補助系

 └攻撃系


 □固有

 ・《聖女の欠片》1/3解放済み


 □ハリトのパーティーメンバー加護

 └スキルポイント:24→28


 ――――◇――――


 あっ、たしかに職業が【聖女候補】に変わっている。

 マリアにも伝える。


「えっ……本当だったんですね……」


「マリアは【聖女】のことは、何か心当たりある?」


「いえ……話には聞いたことがある程度です。何でも大陸に一人だけ出現する存在だとか。それ以外は、詳しくは分かりません」


「そっか。あと【聖女候補戦】は聞いたことはある?」


「いえ、聞いたこともないです」


 マリアは少し混乱している。

 何しろつい先日まで【呪いの神官】忌み避けられていた存在だった。


 だが急に聖女候補という、とんでもない職業にクラスアップしたのだ。

 彼女じゃなくても混乱してしまうだろう。


「そっか……誰かに聞いてみたいな」


 このままだとマリアは困る。

 詳しい人は、どこかにいないだろうか?


「あっ、そうだ! マリア、ちょっと付いてきて!」


 そんな時、ある人物のことを思い出す。


「えっ、どこに行くんですか、ハリト君」


「えーと、オレの生まれ育ったところさ!」


「えっ、ハリト君の⁉」


 マリアの手を引いて、下町を歩いていく。

 目的の場所はここから遠くない。


 最短距離で向かい、到着する。


「さぁ、あそこだよ、マリア。聖女の関して詳しい人がいるのは!」


「えっ……孤児院ですか?」


「そう、あそこの司祭様なら、何か知っているはずだ」


 オレが連れてきたのは、下町の孤児院。

 オレが幼い時から育ててもらった場所だ。


 経営者である司祭様は、博学で賢人。

 きっとマリアの力になってくれるはずだ。


 二人で孤児院の正面入り口に向かう。


 ――――そんな時だった。


「ん? アイツ等は……」


 正面入り口に、嫌な三人組を見つけてしまう。

 オレの同期組で、前回あの場所で揉め事を起こした三人だ。


「ハリト君、大丈夫ですか? 迂回していきますか?」


「大丈夫。オレに任せて! さぁ、いこう!」


 だが今は迷っている時ではない。

 マリアの手を引いて、正面から向かっていく。


 そして相手の三人も、オレの接近に気が付く。


「ん? アイツは⁉」


「ハ、ハリト……⁉」


「お、おい、あっちに、行こうぜ!」


 だが三人は絡んでこなかった。

 そればかり目も合わせず、どこかに去ってしまう。


 何かよく分からないけど、助かった。


「さぁ、この建物奥に、司祭様がいるよ」


「はい。あっ……ここがハリト君の育った場所なんですね?」


 孤児院の中が珍しいのか、マリアは歩きながら中を観察していた。


 赤ちゃんから少年少女、世話をしている大人たち。

 相変わらず賑やかな場所だ。


「まぁ、見ての通り、貧しくて、ごちゃごちゃしていた、大変な場所だけど」


「そうですね……でも、賑やかで楽しそうですね」


 マリアは孤児院の様子を、羨ましそうに見ていた。

 彼女は生まれた時から、呪いのよって伝染病扱いをされていた。


 そのため常に隔離されて、他の同年代と遊んだことすらない。

 だから雑然としていても孤児院の共同生活が、羨ましいのだろう。


「まぁ、お蔭で、オレも知り合いは多いかな? まぁ、面倒な連中が、ほとんだけどね」


「そうですね。アレはちょっとでしたね」


 今までマリアが会った、オレの孤児院の知り合いは同期組の連中だけ。

 そのことを思い出しているのだろう。


「ん? また、避けられた?」


 孤児院の中には、他の同期組もいた。

 だが誰もがオレを見ては、逃げるように消えていく。

 どうしたんだろう?


 でも無駄な時間を取られなくて、嬉しい。

 お蔭で真っ直ぐ司祭様の部屋に、到着できた。


「司祭様、いらっしゃいますか? ハリトです」


「……どうぞ。入りなさい」


「はい、失礼します」


 重い扉を開けて、中に入っていく。

 中にいたのは、白い神官着の初老の男性。

 この孤児院の経営者である司祭様だ。


「司祭様、ご無沙汰していました。最近なんの報告に来なくて、すみませんでした」


「いえ、気にしないでも結構、ハリト君。あなたの活躍は、ライザックから聞いていました」


「えっ、ギルドマスターか⁉」


 ライザックさんは冒険者ギルドのギルドマスター。

 熊のような顔で、巨漢の腕利き冒険者だ。


 厳格な司祭様とは対照的な人物だ。


「あっ、そうか。知り合いだったんですよね、たしか。司祭様とライザックさんは」


「ええ。若い時に同じパーティーでした」


「えっ⁉ し、司祭様も冒険者だったんです⁉」


 今日一番の驚きだった。

 厳格で真面目な司祭様が、昔は荒くれな冒険者だった。

 全く逆なイメージで混乱してきた。


「はっはっは……私も昔から、こんな雰囲気だった訳ではありませんよ。若い時は信仰を深める……という名目で、ライザックたちと迷宮探索に明け暮れていたのだよ」


「なるほど、そうだだったですね。見たかったです、司祭様の冒険者姿を……」


 今の聖職者の姿からは、想像も出来ない。


 あっ、でも司祭様は腕っぷしがかなり強い。

 暴れている孤児たちを、一瞬で動けなくさせてしまうのだ。


 おそらく冒険者として、色んなスキルを身につけているのだろう。


「さて私の話は、ここまで。今日は、そこ子のことで来たのですか、ハリト君?」


 いよいよ本題に入る。

 マリアのことを話題が移るのであった。

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