第23話期待

 中級迷宮のボス部屋の直前、謎の存在を【探知レーダー】で探知。

 姿が見ない相手だった。


 でも相手は憧れのBランクパーティー。

白狼乃牙ホワイト・ファング》のメンバーだった。


 ◇


 上級隠密バーライさんに、オレは疑問の視線を向けられる。


「もしかしたら、普通じゃないのか、お前は? ハリト?」


「あっ……それは……」


 まさかの指摘に、言葉を失ってしまう。

 透明なバーライさんを発見できたのは、オレの特殊な【鑑定】のお蔭だ。


 でも、この能力は軽々と他言できない。

 それが憧れの人たちでも。


「すみません、バーライさん。言えないです、理由は」


「そうか、言えないか。だが安心したぞ、ハリト」


「えっ……?」


 まさかの反応に驚いてしまう。

 どういう意味だろう。


「一任前の冒険者は、他人に軽々しく能力を話さない……ということだ、ハリト」


「あっ……そうか。なんか、すみません」


「あっはっはは……謝るな。これじゃオレが悪いみたいだろ?」


 バーライさんは笑顔になる。

 屈託のない安心感のある表情だ。


「ちょっとバーライ。若い冒険者を試すのは、そこまでよ! 私たちの《白狼乃牙ホワイト・ファング》の悪名になっちゃうでしょ!」


「いやー、そうだな。レイチェルの言う通りだ。だから勘弁してくれ、ハリト」


 女魔術師のレイチェルさんと、バーライさんは談笑しながら謝ってきた。

 高ランクパーティーだけど、何か気さくで良い雰囲気のチームだ。


「それじゃ、私たちは早く戻りましょう? 用事は済んだし」


白狼乃牙ホワイト・ファング》の人たちは、ちょうど地上に戻る所だったらしい。

 準備をして、立ち去ろうとする。


「あっ、そうだ、ハリト。お前、気が向いたら、この冒険者ギルドに遊びに来い。オレたちの行きつけだ」


 立ち去る前にバーライさんが、メモ紙を渡してくれた。

 冒険者ギルドの名前が書いてある。


「えっ、でここの冒険者ギルドの場所は、中心区画ですよね? オレはまだ入れませんが……」


 迷宮都市ガルドは街の区画が、何層にも分かれている。

 その中でも“中央区画”は、許可証がある冒険者しか入れない。


 具体的にはCランク以上の冒険者だけしか、入場が出来ないのだ。


「いや、お前なら、近いうちに入れる。このオレ様が保証してやる」


「えっ……でも……」


「それじゃ、待ってるかなら、ハリト!」


 そう言い残して、バーライさんは風のように去っていく。

白狼乃牙ホワイト・ファング》もメンバーも、あっという間にいなくなってしまう。


 残れたのは、オレとマリアの二人だけ。


「なんか、色々と凄い人たちでしたね、ハリト君」


「うん、そうだね。あれが凄腕の冒険者……Bランクなんだね。本当に凄かったな……」


「あれ、ハリト君? もしかして引け目を感じていますか?」


「うんうん、逆だよ、マリア。むしろやる気が出てきたよ!」


 正直なところ《白狼乃牙ホワイト・ファング》は凄かった。

 全員の能力が、今のオレに理解できなかった


 だからこそ、凄く良い経験になった。

 あの高さまで到達できたら、オレたちもBランクになれるのだと。


「ふう……ハリト君は相変わらず真っ直ぐですね。私もお付き合いします、その高みまで」


「ありがとう、マリア! よし、それじゃ、まずは目の前の……この迷宮のボス戦をクリアしよう!」


「はい!」


 オレたちのモチベーションは上がっていた。

 準備をしてボス部屋に挑んでいく。


 ◇


「それじゃ、いくよ、マリア?」


「はい、準備はOKです!」


 最終戦に挑む。

 この迷宮のボスは、大型の植物の魔物、“食虫植物フラワー・イーター”だった。

 かなり危険な魔物だ。


 でも前回よりレベルとスキルが向上した、今のオレとマリアの敵ではなかった。


 オレの攻撃スキルと回避スキルで、確実にダメージを与えていく。


 さらにマリアの補助魔法で、相手の特殊能力に対応していった。


 ――――そして決着の時はきた。


「ハリト君、援護射撃いきます! 【大聖衝撃ハイホーリ・ショック】!」


 ヒューン、バァン!


 マリアの強力な聖魔法の攻撃が、相手に直撃。

食虫植物フラワー・イーター”の触手が、吹き飛んでいく。


「いまだ! いくぞ……強斬ハイ・スラッシュ!」


 そのまま一気に“食虫植物フラワー・イーター”に斬りかかる。


 ズッ、シャァア!


 相手の急所に攻撃がヒット。

 かなりの手応えがあった。


 シャァーーーン……


食虫植物フラワー・イーター”の死骸が、粒子となって消えていく。

 なんとかボスを倒すことに成功したのだ。


「ふう……ハリト君、大丈夫ですか?」


「うん、探知してみたけど、他にはいなそうだ。この迷宮をクリアだよ、マリア」


「ふう……良かったです。あっ、アイテムが?」


「うん、そうだね」


 消えていく粒子の中に“小さな小手”が落ちている。

 ボスのいる迷宮にだけ、出現するドロップアイテムだ。

 大きめの魔石と共に、アイテムも回収しておく。


「鑑定は後で、ゆっくりしようか。先に街に戻ろうか?」


「そうですね。私も早く汗を拭きたいです」


「たしかに! よし、戻るとするか」


 ボスを倒すと、扉は解除され出られる。

 道中で倒してきた魔物も、まだ復活はしていない。


 オレたちは無事に地上の街に、帰還するのであった。


 ◇


 その後はいつもパターン。

 まずは冒険者ギルドに行って、受付のお姉さんに報告。


 お姉さんは「も、もう、【盗賊の隠し迷宮】をクリアしたんですか⁉ あそこは本職の盗賊でも、かなり時間がかかるんですよ! あっ、本当……ですね。ふう……ハリト君、無茶はしてないですよね?」


 そんな感じで、また心配しれてしまう。

 でも相手は流石プロ。

 任務完了の手続きは、ちゃんとしてもらえた。


 魔石の換金も終えて、今日の依頼は無事に終了。

 その後は各自の宿に戻って、身体を清める。


 夕食の時間、マリアと待ち合わせ。

 前と同じ酒場に、ご飯を食べにいく。


「それじゃ、今回もお疲れさまでした、マリア」


「ハリト君も」


 二人で軽く乾杯して、食事を食べていく。


 ――――食事をしていたら、天の声が急に聞こえる。


 ピロ~ン♪


 ☆《チャレンジ『中級迷宮の依頼を受けてみよう』を完了しました》

 ☆《特別経験値が付与されました》

 ☆《魔物討伐の経験値が付与されました》

 ☆《ハリトのメインレベルが2上昇しました》

 ☆《スキルポイントを9ゲットしました》


 ☆《『ハリトの恩恵』でメンバー『マリア』メインレベルが2上昇しました》

 ☆《『マリア』はスキルポイントを10ゲットしました》


 迷宮のチャレンジしたことで、二人のメインレベルがアップ。

 二人でステータスを確認していく。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:ハリト(♂16歳)

 □職業:軽剣士

 Up!メインレベル14→16

 Up!スキルポイント:25→34


 □スキル

 ・剣技(片手剣)レベル4

 ├斬撃スラッシュ

 ├飛斬スラッシュ・カッター

 ├強斬ハイ・スラッシュ

 └多斬ダブル・スラッシュ


 ・回避(受け流し)レベル4

 ├見切り

 ├受け崩し

 ├集中回避

 └味方受け流し


 ・隠密レベル2

 ├忍び足

 └壁登り


 ・盗賊レベル2

 ├罠発見

 └罠解除


 ・空間収納レベル1

 └収納リスト


 □固有

 ・《観察眼》

 ├鑑定眼レベル1

 └探知レベル2


 ・■■■■■■■■■■


 □身長180センチ


 ――――◇――――


 オレの方がこんな感じだった。


 スキルポイントは貯めておくことに。

 今後の迷宮の様子を見ながら、臨機応変に対応しておく。


 あとマリアも2レベルアップしている。

 彼女の希望で聖魔法レベルと、回避をそれぞれ1アップすることにした。


 新しい彼女のステータスも、二人で確認しておく。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:マリア(♀16歳)

 □職業:神官

 UP!メインレベル10→12

 □スキル

 ・接近戦(杖)レベル1

 └強打アッタク


 Up!回避レベル1→2

 └集中


 Up!神聖魔法レベル4→5

 ├回復系

 ├補助系

 └攻撃系


 □固有

 ・《聖女の欠片》


 □ハリトのパーティーメンバー加護

 └スキルポイント:20→30→24


 ――――◇――――


 うん。

 ちゃんとレベルしている。


 次の迷宮が楽しみね、と話していく。


「それじゃ、次はこれを調べるね……」


 食事しながら、先ほどのドロップアイテムを、鑑定した。


 結果は《盗賊の小手》というアイテム。

 盗賊スキルと隠密スキルに、補正がかかるもの。

 オレが装備することになった。


「ふう……何か新しい装備が、私も欲しいです……」


「そう? それじゃ、今度、買い物に行ってみる?」


 二回の中級迷宮の踏破で、結構なお金が溜まっていた。

 オレの分け前を足したら、けっこう良いものが買えるはずだ。


「えっ、ハリト君、いんですか? 私のために」


「もちろんだよ! あと掘り出し物がある、オススメの店があるんだ。明日そこに行ってみようか?」


「掘り出し物ですか⁉ はい、買い物は好きなので楽しみです!」


 こうして翌日は、冒険を休みにすることにした。

 マリアと二人で買い物に行くのだ


 夕食はもう少しだけ雑談をしてから、解散。

 オレは一人で、自分の宿に戻る。


 ――――そんな時だった。


 ピローン♪


 天の声が聞こえてきた。


 ☆《チャレンジ:《萬屋本店》に行って《聖女の欠片1/3》を見つけよう。受けてみますか?》

 □YES

 □NO


 ん、また買い物系のチャレンジかな?


 でも店は同じだけど、前回と少し違うな。


 それに《聖女の欠片1/3》って何だろう?

 マリアに関係しているのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る