第17話新しいこと
迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。
新しい天の声が従い、冒険者マリアの呪いを解くために一緒に、中級迷宮の《呪いの迷宮》に挑戦。
無事にボスを倒しアイテムを手に入れたが、思わず鑑定の結果を口にしてしまう。
◇
「どうして、知っているんですか、ハリト君? 私の呪いの正式名称を? 家族以外は知らないはずなのに……」
「あっ……」
やって、しまった。
鑑定でしか分からないことを、思わず口に出してしまったのだ。
「ハリト君……あなたは、いったい?」
「そ、それは……」
どう答えればいいのか。
思わず言葉を止めてしまう。
こういう時は、嘘で誤魔化せばいいのか?
それとも正直に、鑑定のことを話すのか?
でも特殊なスキルのことは、ギルドマスターにアドバイスをされていた。
……「信用のならない相手に、自分の特殊なスキルのことを明かしてはいけない」と。
――――いや、大丈夫だ。
マリアは信用が出来る子だ。
今回の迷宮挑戦で、そのことは感じていた。
この子になら自分のことを、正直に話しても大丈夫だ。
「えーと、マリア。説明の前に、少しオレの話をしてもいい?」
「えっ? はい」
「オレも生まれた時に、呪いがあったことは話したよね」
「はい、たしか成長阻害される呪いですよね、ハリト君の場合は?」
「うん、そうだね。その呪いが先日、偶然、無くなったんだ。実はその時に“特殊なスキル”を会得できるようになったんだ」
「それが……私の呪いの正式名称を知った……スキルですか?」
「うん、そうだね。説明し辛いけど、他にも何個かあるんだ。自分の好きなタイミングで、スキルアップできることとか」
「えっ⁉ じ、自分の好きな、スキルアップが出来るんですか⁉」
マリアは出会ってから、一番驚いた顔になる。
マリアは頭が良い。
だからスキルアップの特異性に、すぐに気が付いたのだ。
「なるほど……だから迷宮で、急にハリト君の戦闘能力が、向上したんですね」
「うん、そうだね。黙っていてごめん」
「いえ、言わない方が正解です。その能力は革命的すぎます! 世界の冒険者の概念すら、覆してしまいます! 今後も内緒にしておくべきです」
「ありがとう。そう言ってもらえると。あっ、という訳で、この薬はマリアの呪い《容姿能力減退の呪い》に有効な薬なんだ!」
「分かりました。ハリト君は嘘が付けない性格……だから信じます。それでは試してみますね」
マリアは薬の小瓶を手にする。
すごく緊張した顔だ。
「では、いきます……ゴクリ」
《解呪の万能薬》を一気に飲み干す。
シャアーーン
しばらくしてマリアの全身が、小さく輝きだす。
とても温かい光だ。
今の光が《解呪の万能薬》の効果だったのな?
ふと、マリアの顔に視線を向ける。
「あ⁉ マリアの
包帯で隠していた顔の痣が、キレイに消えている。
あと腕の痣も。
「えっ……あ……ほ、ほんとうに……?」
恐る恐る自分の包帯を、マリアは外していく。
鞄から小さな手鏡を出して、自分の顔を確認する。
「ああ……本当……痣が……ああ……」
包帯を全て外したマリアの顔は、シミ一つない純白の肌だった。
整った可愛らしい顔だ。
「あっ、そうだ! 身体の方は⁉」
思い出したように、マリアは立ち上がる。
全身の服を脱ぎだして、下着姿になる。
「ああ……身体も……良かった……!」
全身の痣も消えていた。
透き通るような白い肌が、眩しく光っている。
感動もあまり、オレも見つめてしまう。
「ん? あっ⁉ ごめん、マリア⁉」
そして気が付く。
マリアが半裸の状態なことに。
形の良い胸の谷間や、太ももが丸見えだったのだ。
「えっ……? あっ、キャっ⁉ わ、私こそ、ごめんない、ハリト君!」
我に返ったマリアが、脱いだ服で自分の前を隠す。
顔を真っ赤にしている。
「いや、オレこそ……あんまりマリアの身体がキレイだったから、見つめちゃって、ごめんね」
「えっ……私の身体、キレイだったの?」
「えっ? うん、すごく綺麗だった。あんなに透き通るように綺麗な肌は、初めて見たよ」
「そう……すごく、嬉しい。綺麗だなんて、生まれて初めて言われたから、私……」
「あっ、でも、オレ、他の女の子の肌かとか、見たことないよ⁉ えーと、ほか孤児院の他の男の子とか、そういう……」
「うっふっふ……大丈夫だよ、ハリト君。ハリト君は嘘を受けない性格だって、知っているから」
「あっはっはは……面目ないね」
なんか恥ずかしい会話をしてしまった。
でも心はとっても心地よかった。
マリアがこんなにも満面の笑みで、笑っていたから。
本当に嬉しいことだ。
「あっ、そうだ。薬の効果もあったことだし、冒険者ギルドに報告にいかない? 任務の達成とダンジョンの報告も含めて?」
「あっ、そうか。そうですね。それじゃ、着替えるので、ハリト君は、後ろを向いてもらえると……」
「あっ、そうだね。それじゃ、宿屋の前で待っているね」
「うん、分かった」
こうして呪いの解呪に成功。
下町の冒険者ギルドに、マリアと報告に行くのであった。
◇
冒険者ギルドに到着。
マリアと中に入ろうとして、オレは一度立ち止まる。
何故ならオレの悪口が、中から聞こえてきたからだ。
……「おい、知っているか。チビガリの奴、あの呪いの醜い神官と一緒に行動しているらしいぜ!」
……「ああ、知ってる。こんど見かけたら、馬鹿にしてやろうぜ! チビガリとお似合いカップルだって」
……「「あっはっはは!」」
また違う同期組の連中だ。
特にマリアに関して酷い。
「マリア、どうする? 違う日にする?」
「うんうん。大丈夫。早く行きましょう、ハリト君」
「えっ、うん?」
呪いが解けたマリアは、ビックリするぐらい行動的になっていた。
自分の悪口を言っているギルド内に、飛び込んでいく。
ギーギ
扉を開けてオレが先に入ると、ギルド内の視線が集まってくる。
「ん? おい、噂をしたら、チビガリの登場だぜ!」
「ん? 後ろにいるのは、醜い神官ちゃんじゃないか⁉」
予想通り同期組の連中が、汚い言葉で絡んできた。
やれやれ、また無視していくか。
――――だがマリアが中に入った時だった。
「えっ……違う子じゃないか⁉」
「いや、あの装備は……あの呪いの子だぞ……⁉」
「ど、どういうことだよ、話が違うぞ……あんな可愛い子だなんて、聞いてないぞ……」
綺麗になったマリアの顔を、見て同期組の連中は言葉を失っていた。
何が起きたか分からず、目を丸くしている。
「そ、それに、チビガリじゃ、ねえぞ……ハリトのやつ⁉」
「ハリトの奴……いつの間に、あんなにガタイが良くなったんだ……」
「も、もしかして、オレたちの方が、チビでガリだと、アレだと……」
そしてオレの方を見て、言葉を失っていた。
何かに対して、かなり驚いている感じだ。
「ハリト君、受付にいきましょう?」
「あっ、そうだね!」
とりあえず同期組のこと放置。
お姉さんのいるカウンターに、報告にいく。
「ん? ハリト君。えっ、もう中級迷宮を攻略したの⁉ こ、こんな短期間で⁉ ん? しかも、その子があの依頼人の子⁉ えっ、どういうこと⁉」
受付のお姉さんも、何やら驚いていた。
でも混乱しながら事務仕事は、ちゃんとしてくれる。
さすがはプロの受付嬢だ。
「それじゃ、これで依頼は完了ね。ハリト君。今度でいいから、ちゃんと私にも説明してよね。そのマリアちゃんとのこととか?」
「えっ、はい。それじゃ失礼します!」
何かギルド内がザワザワしていたので、退散することにした。
他の冒険者の人たちの視線が、何故か痛い。
でも今までのような悪い視線ではない。
どちらかといえば好意的な視線だった。
そんな視線を受けながら、マリアをギルドの外に出る。
「ふう……なんか、疲れたね、マリア」
「えっ、そうですか? 私は凄く、嬉しい気分でしたよ。あんなに良い感情の視線を、向けられたのは生まれて初めてだったので」
「あっ、そうか。そう考えたらいいのか。そうだね」
マリアは強い子だ。
新しく変わった自分の姿を、ちゃんと受け入れている。
それに比べてオレは、未だに実感がない。
急激に伸びてきた身長と、たくましくなってきた肉体にも、違和感しかない。
「えーと、ハリト君。この後の予定とかは……何かあるの?」
「えっ、予定? 今日は遅いから、常宿に帰って、装備の点検をして、夕食かな?」
「うんうん。そういうのじゃなくて……えーと、今後の冒険者としての行動について?」
「えっ……冒険者の行動?」
意味深なことを言われてしまった。
でも抽象的で、ちょっと分かり辛い質問だ。
マリアは何を聞きたいのだろうか?
――――そんな時だった。
ぴろりーん♪
☆《緊急チャレンジ:神官マリアとパーティーを組みますか?》
□YES
□NO
えっ、何だ、これは?
初めての系統の表示だ。
混乱して意味を読み取れない。
言葉にして確認してみよう。
「えーと、マリアと、パーティーを組みますか? かな?」
「えっ……ハリト君⁉ は、はい、もちろん、喜んでお受けします! これからも私と一緒を組んでください! ハリト君の方から言ってもらえて、凄く嬉しい……」
えっ、マリア⁉
なんか、勘違いさせちゃったかな、オレ?
しかも嬉しそうに即答してきた⁉
ピロリーン♪
☆《『神官マリアとパーティーを組みますか?』を完了しました》
えー、天の声も勝手に□YESなっているし⁉
どういうこと⁉
声に出しても、□YESの選択になっちゃうの?
――――そして、更に驚きの表示が出てくる。
☆《チャレンジ:パーティーメンバーのステータス画面を確認して、スキルアップに挑戦してみよう》
えっ⁉
パーティーメンバーのことも、スキルアップも出来ちゃうの、オレが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます