第16話薬の種類

 迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。

 新しい天の声が従い、冒険者ギルドで依頼人マリアと出会う。


 マリアの呪いを解くために一緒に、中級迷宮の《呪いの迷宮》に潜入。

 無事にボスを倒し、地上に帰還した。


 ◇


 オレはマリアと迷宮都市の中を歩いていく。


 向かう先は薬師の店。

 目的が、手に入れた薬の効果を確認するためだ。


「ふう……どんな結果が出るのかな……」


 マリアは歩きながら深い息を、何回も吐いている。

 手に入れた薬が、本当に自分の呪いの解呪に役だつのか?

 不安で仕方がないのだろう。


(不安そうだな、マリア。たしかに、どんな調査結果が出るか、まだ分からないからな……)


 迷宮で入手したアイテムは、そのままでは使うのは難しい。

 どんな効果や能力が付与している、専門家ないと判別が不能だから。


 特に今回のように内服する薬系は、一か八か飲むことは出来ない。

 もしかしたら毒の場合もあるのだ。


(薬師の店で、ちゃんと正確な判断結果が分かるといいな……ん?)


 その時だった。

 あることを思い出す。


 ――――そうか、わざわざ薬師の店にいく必要はないのだ。


 さっそくマリアに相談してみよう。


「ねぇ、マリア。ちょっと提案があるんだけど、薬師の店に行く前に、その薬のことをオレが調べてみてもいいかな?」


「えっ……ハリト君は、薬師のスキルもあったんですか?」


「うーん、それに近いものかな? 調べてみたいんだけど場所は……周りに誰もいない静かな所がいいかな?」


「分かりました。それなら……この先に私の常宿があります。そこで大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。それじゃ行こうか!」


「こっちです」


 マリアの案内で、近くの宿屋に向かう。

 冒険者である彼女の常宿だ。


 ◇


 宿に着く。

 二階にある彼女の部屋に向かう。

 ベッドが一個あるだけの長期滞在用のタイプだ。


 部屋に着いたので、早速調べることにした。


「それじゃ、少し調べてみるね」


「はい、よろしくお願いします」


 入手した薬の小瓶を、手に持つ。


(さて……オレのスキルで“内容物”まで分かるといいけど……)


 もちろんオレには薬師のスキルはない。

 だから調べるのに使うのは、前から会得していたスキルだ。


 小瓶を中身を開けながら、意識を集中する。


(よし……いくぞ、【鑑定】!)


 ピコーン♪


 鑑定成功の音が流れた。

 小瓶の前に、透明な文字が出てきた。


 ――――◇――――

《鑑定結果》


 □名前:解呪の万能薬

 □分類:薬

 □ランク:B

 □固有

 └使用するとランクB以下の呪いを解呪できる。


 ――――◇――――


 おお、出ていた。

 前の“古代の着衣アーマー”の結果よりはシンプルな内容。

 でも分かりやすい。


 なるほど、この薬の名前は《解呪の万能薬》か。

 間違いなく、呪いを解く効果はあるようだ。


 でも、『ランクB以下の呪いを解呪できる』と書いてある。

 ということはランクA以上の呪いには、効果はないのであろう。


 ん?

 そもそも呪いにランクなんて、格付けがあったのか。

 知らなかった。


 あとマリアの呪いのランクは、何ランクなのだろう?


 彼女も知らないはずだから、どうすれば……。


 ああ、そうか。

 マリアの呪いを、こっそり【鑑定】してみればいいのか。


(よし、それなら……マリアの腕の呪いのあざを見ながら……【鑑定】!)


 ピコーン♪


 鑑定成功の音が流れた。

 透明な文字が出てきた。


 ――――◇――――

《鑑定結果》


 □名前:容姿能力減退の呪い

 □分類:呪い

 □ランク:B

 □固有

 └対象者の表皮に醜いあざを浮かばせる。メインレベルと各スキルにマイナス1補正。伝染性はない。


 ――――◇――――


 おお、出てきた。


 なるほど《容姿能力減退の呪い》という名前だったのか。


 外見と能力に、かなりのマイナス補正があるのか。

 これは厳しい呪いだな。


 でも伝染病とは違うから、彼女が虐げられてきたのは、やはりデマだった。


 そして呪いのランクB。

 つまり《呪いの万能薬》の効果があるぞ!


 さっそく本人に教えてあげよう。


「えーと、マリア。お待たせ、この薬は《解呪の万能薬》といって、マリアの呪いに効果があるよ!」


「えっ……本当ですか、ハリト君⁉」


「本当だよ! これでマリアを長年にわたって苦しめてきた《容姿能力減退の呪い》を、解呪できるんだよ!」


 きっとマリアも喜んでくれるに違いない。

 オレも興奮して説明をした。


 ――――でも、その時だった。


 興奮のあまりオレは、余計な単語を口にしていた。


「えっ……? どうして、知っているんですか、ハリト君? 私の呪いの正式名称を? 家族以外は知らないはずなのに……」


「あっ……」


 やって、しまった。

 鑑定でしか分からないことを、思わず口に出してしまったのだ。


「ハリト君……あなたは、いったい?」


「そ、それは……」


 どう答えればいいのだろか。

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