第3話トレーニング
オレは迷宮で死にかけたことによって、不思議な部屋に閉じ込められた。
《【成長阻害の呪印】反転完了》という不思議な浮かぶ文字と共に、呪いが消滅。
念願だったレベルアップが出来た。
◇
歓喜の涙を話していたのも束の間、次なるミッションが訪れる。
☆《トレーニング・ミッション:習得したスキルポイントを、好きなスキルに配分してみよう》
ん?
これが次のミッションだというのか?
この説明だと、自分が持っている今のスキル……『剣技(片手剣)』これを触ればいいのか?
今までと同じように浮かぶ文字を右手で触ってみる。
☆《剣技(片手剣)レベル0→1にしますか?(必要スキルポイント1)》
□YES
□NO
また選択肢が出てきた。
今オレが会得しているのは、剣技(片手剣)だけ。
だから迷う必要ない。
いや……その前に、確認をしておこう。
まずはメインレベル2の強さが、どんな感じなのかを。
先ほどの片手剣を右手で構える。
ためしに素振りしてみるのだ。
「さて、いくぞ……はっ! とう! せい! おお⁉ これは⁉」
すごい効果だった。
先ほどまで鉄塊のように重かった片手剣が、楽々に振られる!
おそらく体感的に、これはメインレベルが上昇したことも大きい。
基礎的な筋力と体力が、圧倒的に上昇しているのだ。
よし、これで現状の確認はできた。
いよいよ次は、剣技のレベルアップをしてみるか
「□YES だ!」
☆《ピローン♪ 剣技(片手剣)レベル0→1になりました》
笛のような音が流れ、次なる文字が出てきた。
こんな簡単にことで本当に、剣技のスキルが上昇したのであろうか?
はっきりいって半信半疑だった。
なぜなら剣技のスキルを上昇させるのは、たった1コでも大変。
毎日のように基礎と実戦を繰り返しも、数ヶ月から数年はかかる時もあるのだ。
それが、こんな一瞬で上げられる訳が……
そう思いながらステータスの記号を、触ってみる。
――――《ステータス》――――
□名前:ハリト(♂16歳)
□職業:剣士
□メインレベル2
↓スキルポイント:1→0
□スキル
UP! 剣技(片手剣)レベル0→1
□固有
■■■■■■■■■■
□身長144センチ
――――◇――――
はっ……マジですか?
本当に剣技(片手剣)レベルがレベル1になっていた!
ん?
その代わりに『スキルポイント:1→0』になって、ゼロになっている。
なるほど、そういうことか。
さっきの(必要スキルポイント1)とは、このことだったのか。
スキルレベルを上昇させる代わりに、スキルポイントの貯金が減った訳だ。
普通に街で買い物する感じなので、これは分かりやすい。
よし、つぎは剣技の上昇を調べてみよう。
先ほどと同じように、片手剣を右手で構える。
ためしに素振りしてみる。
「さて、いくぞ……はっ! とう! せい! どりゃ! おおおおお⁉」
先ほどよりも、すさまじい効果だった。
イメージに近い感覚で、思い通りに片手剣を扱える。
この剣筋に比べたら、先ほどのレベル0は子どものチャンバラにも思える。
それほどまで剣技(片手剣)レベル1の恩恵は凄かったのだ。
「なるほど、これなら腕利き冒険者が、特定のスキルアップにこだわる気持ちが分かるな……」
体感して分かった。
スキルレベルによる戦闘能力の強化の大きさを。
「この剣技(片手剣)レベル1があれば、魔物も一撃で倒せそだな……」
攻撃スキルさえ高ければ、低身長や、筋力の低さも十分カバーできる。
小さいことをメリットし、有効的な戦い方もできそうだ。
「これは凄い。これならオレはダメな冒険者から脱却出来る……よし、頑張って“一人前の冒険者”を目指すぞ!」
自分の最大の目標を、声に出して宣言する。
絶対に成し遂げてみせるぞ。
よし、次にいくぞ!
あれ、でもトレーニング・ミッションはもう終わりなのかな?
☆《トレーニング・ミッションその2:回避を覚えるために、自動人形パペット君の攻撃を100回 回避してみよう》
おっ、よかった。
新たなトレーニング・ミッションが出てきたぞ。
なるほど、攻撃の次は回避を覚えるのか。
ん?
この『自動人形パペット君』……って、なんだ、これ?
この部屋のどこかに隠れているのだろうか?
ボワン!
ん?
なんだ、あれは?
さっきの片手剣の時と同じように、地面から何かが現れたぞ⁉
あれは……人形かな?
八本腕の等身大の人形。
八本の片手剣を、それぞれの手に握っている。
あと足には不思議な形の車輪がついていた。
あっ……もしかして、あれが……『自動人形パペット君』?
ウィーン!
どうやら正解のようだった。
等身大の人形……自動人形パペット君が動き出す。
こちら……オレに向かって車輪でダッシュ。
剣で斬りかかってきたのだ。
「えっ? いきなり⁉ くっ!」
自分の片手剣で、パペット君の斬撃を受け流す。
ふう、危なかった。
でもメインレベル2と剣技(片手剣)レベル1の恩恵で、なんとか戦えそうだ。
ウィィーン!
パペット君がまたダッシュ攻撃してきた。
先ほどのよりも素早く、斬撃も鋭い。
「くっ! 危なかった……なるほど、段々と早く、強くなっていくのか。これは面白な! よし、どんどん! いくぞ」
パペット君とのトレーニングを開始する。
基本的には相手がダッシュ攻撃をしてくるのを、ひたすら回避しいく鍛錬。
だがパペット君の攻撃は段々と激しさを増していく。
攻撃のバリエーションも多彩化していき、回避するだけも精一杯。
さらに同時に使う剣の本数も、段々と増えていく。
「66回目! よし、パペット君、次もよろしくお願いいたします!」
だがオレは懸命にチャレンジしていく。
何故ならパペット君とのと鍛錬は、実りがあり楽しいのだ。
色んな角度とバリエーションの斬撃。
オレは今までに受けたことがない攻撃ばかり。
だから回避と受け流しだけでも、充実した鍛錬だったのだ。
「99回目……よし、次でラスト。パペット君、最後よろしくお願いいたします!」
いよいよ100回目
ウィィーン! ガァアアアン!
パペット君がジグザグにダッシュ。
物凄いスピードで動きを読みにくい。
ズシャーーン!
そして全腕、8本の片手剣の同時攻撃。
今までとは比べ物にならない連撃だ。
「はっ!とう! さぁあ!」
オレは間一髪で回避。
何とか回避に成功する。
ふう……なんとか、やりきったぞ。
うっ……予想以上に、きつかった。
もはや一歩も動けない状態。
本当にギリギリの状態でゴールしたのだ。
でも何とも言えない充実感。
やっぱり相手がいる鍛錬は、楽しいな。
向上心で高まり、剣士としての充実感がある。
さて、天の声よ。
オレはやりきったぞ。
今回はどうなるんだ?
☆《100回 回避トレーニング・ミッションが完了しました》
☆《特別経験値が付与されました》
☆《ハリトのメインレベルが1上昇しました》
☆《スキルポイントを3ゲットしました》
おお⁉
今回もレベルが上がったぞ。
まさか、こんな短期間レベル3になったというのか⁉
普通なら数ヶ月かかる場合もある、レベル2から3の壁を一気に突破か。
でも驚く前に、ちゃんとステータスを確認しておこう。
ぬか喜びにならないように。
よし、ステータスの記号をタッチだ。
――――《ステータス》――――
□名前:ハリト(♂16歳)
□職業:剣士
UP! メインレベル2→3
UP! スキルポイント:0→3
□スキル
・剣技(片手剣)レベル1
└NEW
NEW 回避(受け流し)レベル0
□固有
・■■■■■■■■■■
UP! 身長144→148センチ
――――◇――――
おお!
ちゃんとメインレベルが3になっているぞ。
しかも新しいスキル『回避(受け流し)』も取得している。
これで実感した。
本当にレベルが上がったことを。
そして回避系のスキルを習得したんだと。
あと剣技の攻撃手段ひとつ『
これは確か接近戦用の技なはず。
よし、今回も会得したことを体感してみよう。
まずは『回避(受け流し)レベル0』のレベルを1にしてみよう。
文字をタッチ。
☆《回避(受け流し)レベル0→1にしますか?(必要スキルポイント1)》
□YES
□NO
おっ、剣技の時と同じように出来た。
それなら□YES!
☆《ピローン♪ 回避(受け流し)レベル0→1になりました》
また笛のような音が流れ文字が出てきた。
とりあえず念のために、ステータスをタッチして確認しておこう。
――――《ステータス》――――
□名前:ハリト(♂16歳)
□職業:剣士
□メインレベル3
↓スキルポイント:3→2
□スキル
・剣技(片手剣)レベル1
└斬撃
UP!回避(受け流し)レベル0→1
□固有
■■■■■■■■■■
UP! 身長148センチ
――――◇――――
おお、ちゃんと『回避(受け流し)』がレベル1になっている。
さっそく、どんなものか体感してみよう。
あれ?
でも、さっきの剣技とは違い、回避系は一人じゃ試すことは出来ないな?
どうしよう……。
ウィーン
あれ、パペット君がまた動いて、オレの方を向いているぞ。
あっ、もしかして、試しに攻撃してくれるのかな?
「パペット君、1回だけお願いします。もしも、よかったら、さっきの100回目の連撃で」
ウィィーン! ガァアアアン!
パペット君がジグザグにダッシュ。
物凄いスピードで動きを読みにくい。
おお、きた!
さっきの100回目のやつだ。
ズシャーーン!
全腕、8本の片手剣の同時攻撃の連撃がきた。
「よっ! とう! あら! よっと!」
おお、すごい!
さっきの何倍も楽に回避できた。
これが回避(受け流し)レベル1と、メインレベル3の恩恵なのだろう。
すごい。
これなら回避にさえ専念したら、大抵の攻撃は大丈夫そうだ。
もはやパペット君も怖くはない。
ウィーン
ん?
急にパペット君が向きを変えて、動き出したぞ。
壁に向かって剣を構えて、どうしたんだろう?
ウィィーン! ガァアアアン! ズシャーーン! ズッシャ! バシャん!
あっ……凄い十六連撃だった。
凄すぎて、目で追うのがやっと。
あんなのは今のオレは絶対に回避不能。
ウィーン
またパペット君がこっちに来る。
ドヤ顔をしているように見える。
『ボクの本気はあんなもんじゃ、ないんだからね』と言っているように見えた。
「いや、さっきはオレの失言でした。ごめんなさい」
ボワン!
あっ、パペット君が床に消えていく。
もしかしたら役割を終えたから、帰るのかもしれない。
「パペット君、本当にありがとうございました! オレがもっと強くなったら、またトレーニングしようね!」
ウィーン
あっ、パペット君が床に完全に消える直前。
右手を上げて、なんか笑ったような気がする。
表情がないから、そんな訳はないかしれない。
でも苦楽を共にしたオレには、たしかにそう見えていたのだ。
「ふう……さて、次は何のトレーニングだ、元気だから、どんとこい! ん?」
その時、自分の異変に気が付く。
さっきまでの疲労が、完全に消えているのだ。
司祭様に回復魔法を、かけてもらったような感じだ。
「あと、腹も減らないよな? ずっと激しく動いているのに?」
この密室に来てから、かなりの時間が経っている。
でも、空腹感はまったくない。
かなり体調は良い。
あと思い出したけど、オレの両手の骨折が、完全に治っていた。
この部屋で目覚めた時は、既に完治していたのだ。
「この不思議な部屋のお蔭なのかな? まぁ、考えて仕方がない。ありがとうございます!」
部屋に向かって頭を下げる。
この不思議な感覚のお蔭で、疲労や空腹の心配もなく鍛錬に励める。
鍛錬中毒なオレには、天国のような環境なのだ。
「さて今までのタイミング的に、次のが出てくるのかな? また床から、何か出てくるのかな?」
だが次の瞬間、オレの予想は大きさ外れる。
シャン、シャン
鈴のような音が鳴った。
「えっ⁉」
なんと自分がいた正方形の部屋が、形が変化していた。
先が見えない、細長い廊下の変化していたのだ。
「な、なんだ、これは……今さら驚かないと思っていたけど、これはにはびっくりしたな……」
☆《トレーニング・ミッションその3:覚えた攻撃と回避を一緒に使ってみよう。自動人形レンド君の弓矢攻撃を100回、回避&攻撃してみよう》
ん?
そうか、次は攻撃と回避を一緒に使うのか。
ちょっと実戦形式っぽいな。
でも『自動人形レンド君の弓矢攻撃を100回』って、なんかヤバそうな予感しかしないな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます