第26話 愁弥とブラッド
だが、金色の獅子を象ったネックレス、、、。それを手にし購入した事で、異世界となるのであろう別世界に彷徨うことになった。
それが、、、アルティミスト。
彼の訪れた世界は極寒の地ーー。
雪と樹氷ーー、それしかない世界だった。太陽すら降り注がず自然は雪と氷の地。
人が住んでいるとは到底思えぬ吹雪の世界ーー。高校の制服は一瞬で足から凍りつきその寒さで彼は凍死直前であった。
だが、運命の悪戯か……、その地で唯一の生存者に命を救われた。それがこの世界の歴史上で断罪を求められる一族。“
更に黒獣の“
それはーー、ブラッドも同じであった。
「“
愁弥は叫んでいた。
ナディア魔道士学館、そこに連れて来られたのはいいが、そこの言わば……“長”であろう。カルラと言う老女は、彼等を見て直ぐに魔術を放ったのだから。
閃光に包まれ眩いその光の中で、愁弥は見たのだ。隣にいる“瑠火”が、直ぐに大理石の様な高価な石床に倒れたのを。それを見て彼は叫んだ。彼女の名をーー。
更に、彼女に歩み寄ろうとした。だが、そこで待っていたのは……、両刃の斧を我に向けるドワーフのブラッドだったのだ。
「…あ?」
眼の前で首元をまるで突き刺そうとするかの様に斧の刃を向けるブラッドに、愁弥から出たのはその一言だった。
彼のそのブラウンの瞳は、優しげなドワーフのその顔を見据えた。
「いやっ!! 離して!!」
愁弥の耳に届いたのはその悲鳴。後ろをちらっと見れば、、、リデア。
彼女があの“スティル”と、そしてここに案内した魔道士の青年……“クリュト”により拘束されていたのだ。後ろから羽交い締めにし、その行動を妨げるスティルに、魔道士のミントと言う少女は叫んだ。
「何してるの! スティル!!」
その可愛らしい瞳には涙が浮かんだ。それには理由があった。
「きゃあぁあっ!!」
リデアの悲鳴が直ぐに響いたからだ。
バチバチと彼女の華奢な身体は、羽交い締めにされた状態で電撃を受けたのだ。それはまるで彼女の全身から光が放たれるかの様に眩く明るく……、その華奢な身体を直ぐに血塗れにした。
「いやぁぁぁっ!!」
終わらなかった……。悲鳴はリデアなのか、、、ミントなのか……。
リデアの身体を羽交い締めにしていたその背後の、スティルの身体をも光は包み……、愁弥、ルシエル、、、ヘルハウンドの眼の前で華奢な冒険者のリデアの身体は……、破裂したのだ。
「リデア!!」
叫んだのは愁弥だった。
更に肉塊が2つ……眼の前で爆破した。
愁弥は
「いやぁぁぁぁっ!!」
悲鳴はミントであった。眼の前で森の中で彼女を護った少年は木っ端微塵に吹き飛び肉片になったのだから。
ブラッドは愁弥の首元に斧の刃を突きつけながらも、その眼を閉じた。苦渋なのか……悲哀なのか。それはわからないが、彼は目を反らした。リデアとスティルの“死”から。
フフフ……
聞こえて来るのはその不気味な笑い声。
愁弥は目を向けた。
玉座の様な豪華な椅子に腰掛ける老女が、笑ったのだ。
「あっはっはっはっはっはっ!!!」
それは……まるで、爆笑。
何か面白い物を見た様な笑い。
愁弥は右腰に提げている“神剣”に手を掛けた。だが、その柄を握ると斧の刃は、彼の首元に横筋つける様に食い込んだ。それは、チリっと傷む程であったが、愁弥は思った。
(……撥ねられる……)
首をそのまま突き刺し刎首にされる。そう感じた。何故なら眼の前にいる自身よりも50センチも低い体長のドワーフ……、ブラッドの両刃の刃は首元から一寸ともズレない。動けば突き抜く。そう感じる程、彼は動揺すらしていなかった。
「さて、お主らは少し面白い連中だ。地下へ連れて行け。聴いてやろう。この世界に何故、刃向かうのか。」
カルラの声であった。
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