第13話 自衛隊、攻撃開始!

 記者会見が終わると、僕たちは間森一佐とともに15階の対策会議室に戻った。

 U - ホークに対してこれから遂行される自衛隊の攻撃をここで見ることになる…つまり戦闘指揮室に事実上なる訳で、僕はにわかに緊張と興奮を覚えていた。

 その時、僕の上着の内ポケットからスマホの着信音が鳴った。

「…今はまだ大事な対策会議中なんだから、この場所ではマナーモードにしないとダメじゃん!いったい誰からなの?」

 甲斐路が僕を睨んで言った。

「ヤバい!母さんからだ !! 」

 僕は着信表示を見て言った。

 慌てて会議室から廊下に出て通話を受けると、いきなり母さんの叫ぶような声が耳に響いた。

「もしもし、テルくん!どういうこと !! 何であなた、テレビに出てるの?宇都宮で怪獣の調査って、何故そんな危ないことを !? 」

 当然ながら母さんは驚きと怒りと不安がゴッチャになった口調でまくし立てて来た。僕は今朝、家を出る時に

「今日ちょっと友達と出かけるから、帰りは夜…晩御飯までには戻るよ」

 と言っただけだったんだ。

「いや、僕もこんなことになると思わなかったんだ!…ゴメン母さん、今ゆっくり話せないんだ!帰ったらちゃんと説明する。今日はたぶん帰れないけど…じゃあね !! 」

 僕はそれだけ言って強引に電話を切った。


 会議室に戻ると、甲斐路が

「お母さん、何だって?」

 と訊いて来たので、

「僕がこれでテレビに映ったから驚いて心配してた…帰ったら怒られるかもね」

 と言ったら、急にしおらしくなって

「そうかぁ~…勝手に巻き込んでゴメン!」

 と初めて僕の前でうつむいたので逆にビックリした。

「いや、この僕がまさかの日本の首相とテレビの記者会見に出席だぜ、凄いことだよ!後は早くあの怪獣をやっつけて帰ろうよ」

 僕がわざと笑顔を作ってそう言うと、

「…そう簡単に行けば良いけど」

 甲斐路は窓の外を向いてボソッと言った。


「…間もなく15:40 (ひとご~よんまる)、 地上部隊3名及び戦闘ヘリ6機にて目標への攻撃を開始する!よってこれよりここを戦闘指揮管制室とします!U - ホークへの攻撃状況確認のため、戦闘ヘリ1号機と6号機には機載カメラ設置、モニターにて映像を視認出来ます!…以上、対U - ホーク第一次攻撃準備良し !! 」

 室内では多々貝自衛官がそう宣言して、メンバー各自の緊張感がいよいよ高まって行く。


 塚山古墳上に止まっている怪獣U - ホークから400メートルの距離にある五階建て民間ビルの屋上には、陸自宇都宮部隊3名の自衛官がロケットランチャーを構えて待機していた。

「…内 貫男 (うちぬくお) 一尉報告!ロケットランチャー部隊3名、配置完了しました。目標照準良し !! 」

 リーダーの自衛官が戦闘指揮管制室に無線で報告を入れる。

「管制室より指示!15:40に第一弾を目標に発射、着弾確認後直ちに第二弾、同着弾確認後第三弾を撃ち込め !! なお、発射後はU - ホークからの反撃弾が来る恐れがあるため、現場を至急退避せよ!」

 県庁の戦闘指揮管制室からは、体格の良い部隊長からの指示が飛ぶ。

 …室内に高まる緊迫感から目をそらして窓の外を見れば、いつの間にか雨は止んでいた。


「時刻15:40、攻撃開始!」

 そしてついに部隊長が発声を送信して、U - ホークを睨んだビルの屋上からロケットランチャーが発射された。

 次の瞬間、怪獣の腹にオレンジ色の発光とともに小さく炎が上がり、一拍遅れて「ボン !! 」と爆発音が返って来た。

「第一弾発射、着弾確認!目標に命中 !! 」

 ドンッ !!

「第二弾発射!」

 今度は目標の胸部に命中、同様に発光、炎、爆発音の順にその効果が僕たちの目に耳に返って来た。さらに間髪を入れずに…ドンッ !!

「第三弾発射 !! 」

 最後は目標の脚の付け根部分に命中!小さく爆発炎が上がり、U - ホークは「ギャーッ!」と鳴いてバッ ! と翼を広げた。

「全弾命中!退避します !! 」

 内 貫男一尉の声が来た。

「よし、退避急げ!」

 部隊長が叫ぶ。

「目標、翼を羽ばたかせ、飛翔します!」

 モニター映像を見ながら多々貝自衛官が言った。

「戦闘ヘリの映像を出せ!」

「ヘリ1号機からの映像を出します!」

 大型モニター画面が切り替わり、市街上空へと飛び出した目標を正面に小さく捉えた映像が流れた。

「こちら1号機、現在高度900、目標まで距離5000、ミサイル発射します!」

「よし、撃て!」

 部隊長が冷静な声で応えた。

 ビシュッ !!

 鋭い音とともにミサイルが画面下から飛び出して、アッという間に市街上空を一直線に走って行く。そして市街の映像がぐるんと横に流れ始めた。ヘリが旋回して180度向きを変えたためだ。

 U - ホークは口を開けて弾丸を発射し、向かって来たミサイルを迎撃、宇都宮の街の上に激しい爆発音が響き、直径30メートルほどの火炎球が咲いた。その炎の球を突き破って怪獣は1号機ヘリを追いかける。

 ヘリ1号機は全速力で進路を北にとり、宇都宮の街から離れて行く。

 それを追うU - ホークのさらに後方にはしかし戦闘ヘリ2~6号機が出動して目標を追撃する態勢に入っていた。












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