第4話 宇都宮市にUFO飛来 !?
…3月下旬の今日はまだ春風も時折肌寒く感じられ、僕たち2人はサキタマ古墳公園を離れて帰路についた。
時刻は12時を過ぎ、お腹も減ったし身体もちょっと冷えたので、僕たちは帰り道の途中、加須市街の中のうどん屋に入って昼食を摂った。
「…護神獣の存在って、何なの?」
テーブルに着いて「きつねうどん定食」を頼むと、僕は甲斐路 優に先ほど聞いた言葉に対する質問をぶつけた。
「貴重な埋葬品が眠る古墳だけど、実際には常に警備や見張りをすることは難しいでしょう?…だから、古墳が荒らされたり壊されたりした時には、そういうフトドキ者を懲らしめるために、巨大獣を出現させるのよ!」
「巨大獣?…出現させるって、何処から?」
「…それは、…ひとクチで説明するのが大変なのよね!…」
などと2人で話しているうちにテーブルに注文したウドンが出て来たので、僕たちは「頂きます」と言ってずるずるとウドンをすすった。
「…乙ちゃん、秘密守れるって言ったよね?」
ウドンを食べながら彼女がそう言うので、
「もちろん!…でも、その秘密って?」
と訊くと、彼女が答えた。
「…実は私、護神獣その他について自分の考えをブログに挙げてるの!…けっこう色んな人が興味持って見てくれてるのよ!でも、普通の人には突飛な説だから…」
「…なるほど、でも…僕はもちろん見たい!見て良いよね !?」
僕は素直に彼女の説に俄然興味を持って言った。
「うん !! …美味しいね、うどん」
食べながら話していると、店内の客席上の棚台のテレビが昼のニュースを伝えていた。
「…栃木県宇都宮市内の古墳で、悪質なイタズラによるものと思われる落書きや火災がありました」
「えっ !? 」
僕たちは思わずテレビ画面を見上げた。
「本日午前2時頃、宇都宮市西川田の "塚山古墳" 周囲の芝が燃えていると付近の住民から通報がありました。芝は冬季、枯れて乾燥した状態のため燃え易くなっており、約200平米が焼けましたが、消防車が出動し約1時間後に鎮火しました。…また、午前6時頃には宇都宮市長岡町の "長岡百穴古墳" 内の石仏群が何者かによって塗料をかけられている様子が、近隣住民らの通報によって判明しました。」
「…大変だわ !! 」
甲斐路 優が箸を止めて叫んだ。
「…付近では、夜間に複数台のバイクによる走行音などがあったとの証言が多数寄せられていて、地元警察では暴走族による犯行の可能性もあるとして捜査を進めています」
ニュース画面を見上げて固まっている彼女に、
「あのニュースが、何かあるの?」
と僕が訊いた瞬間、下から突き上げるようなガツン ! とした揺れが来た。
…とたんにテーブルの上のウドンのつゆが波うってこぼれ、店の厨房からは「きゃ~っ !! 」「火を消せっ !! 」と叫ぶ声が聞こえた。
「地震だ!」
「でかいぞ !! 」
店内の客からも声が上がる。
地震は横揺れに変わり、テーブルのメニュー立てが倒れたり、厨房の方から食器や皿やらが床に落ちて割れる音も聞こえたが、ほどなくして揺れは収まった。
僕と彼女は、気がつくとウドンの丼を両手で掴んで固まっていた。
地震が収まってお互いにその顔を見たら、何だか急に可笑しくなって笑ってしまった。
…そしてテレビ画面ではニュースキャスターが、たった今関東地方に地震があったこと、その規模や震源地などは分かり次第お知らせする旨伝えていた。
…とりあえずウドンの残りを食べ終えて、席を立とうとした時にテレビ画面から地震のニュースの続きが来た。
「先ほど、12時40分頃関東地方に地震がありました。震源地は栃木県北西部で、地震の規模はマグニチュード6.1、震源の深さは10キロと推定されます。各地の震度は宇都宮市で5強、鹿沼市が震度5弱、日光市、矢板市が震度4…」
「…いやな予感がする ! …これからすぐにでも宇都宮に行きたいところだけど、さすがにそうも行かないわね ! 乙ちゃん、急いで帰るわよ!」
…甲斐路 優はそう言って食事代を払うと、素早く店の外へと出て行った。
「ちょ、待ってよ!」
慌てて僕もウドン代をテーブルに置いて後を追う。
帰り道はひたすら彼女のモンキー(Z50ーJ) を追って走った。
…途中、一度だけ春日部市内の「道の駅しょうわ」で休憩をとった。
「さっきの地震と宇都宮の古墳と、何か関係が?…」
ヘルメットを脱いで僕が訊くと、
「今は詳しく説明してる時間が無いわ ! …家に帰ったらその後のニュースに注目しといてね!」
彼女はそう言うと、缶コーヒーを飲み干してモンキーをスタートさせた。
…夕方、この日の朝に落ち合ったコンビニ前で彼女と別れ、僕は家に帰った。
その夜、テレビを見ると、彼女が気にした通り、驚くべきニュースが目に飛び込んで来た。
「本日、栃木県北西部に起こった地震で宇都宮市の "長岡百穴古墳"に亀裂が入り、一部が崩落しました。さらに古墳崩落後、上空に未確認発光飛行体が出現し、高速で旋回したのち、古墳西側の多気山方向へレーザー光線状の光を発した後、姿を消しました。…この映像は付近に居合わせた方が撮影したものです。… 」
…僕が固唾を飲んで画面を見ていると、スマホに着信が来た。
甲斐路 優からだった。
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