帰り道
と、意気揚々と町長宅を出た僕だったけど、出た早々に幼女に拾われた。
歳は3歳くらいだろうか? ちょっとおしゃれな綿のワンピースに真っ白い綿のパンツ。
やっぱりこんな山間部の町でも、町の人っていい服着ているなー。
「んー?」
なんて考えている間も、不思議そうな顔をしながらもそもそぎゅうぎゅうと握りまくる。
なんかすべすべでぷにぷに。逃げないように力を入れているんだろうけど、優しく揉まれているようで心地いい。
そういえばアルフィナ様に初めて拾われた時も、こんな感じだったなぁ……。
そして改めて力が
御者台でメアーズ様と肌を寄せ合っている時や、馬上でしがみつかれている時も、なんというか生きる力みたいなエネルギーの吸収を感じ取っていた。
だけと触手の状態でいじられるとまた違う。桁違いと言ってもいいかもしれない。
声は出せないけど、思わず声が出てしまいそうだ。
そんな僕のくねくねした動きが面白いのか、幼女の方もヒートアップ!
更にぎゅうぎゅう揉んだり引っ張ったりとやりたい放題。
ああ、なんか声じゃない方が出そう……。
「ちょっとルル! なんてもの触ってるの!」
だけど突然に響く怒り声。見ると肩幅の広いおばさんが上から幼女と僕を見下ろしている。
怯える幼女! こいつはあれか? モンスター!?
幼女が手放すと、すぐさま僕を掴んで投げ捨てた。
離れた木に直撃し、更には地面に落下。痛い、すごく痛い……。
「変なものを触っちゃダメだって、いつも言っているでしょ!」
「はーい」
「最近は魔物だって出るんだからね。家に帰ったら、必ず手を洗う事!」
「はーい」
幼女はそのままモンスターについて行ってしまった。
いや判るけどね、あれは母親だよ。
というか、やっぱり魔物が出るのか。でも警戒心は薄い……まださほど大きな被害が出ていないんだな。
でもミリーちゃんの話を聞く限り、中心部では相当な状態になっている。
――怖い?
誰かに聞かれた気がした。
そりゃ怖い。でもこの怖さは何だろう。今更死ぬ事が怖いのかな? 働かず、食べもせず、生きているって実感があまりない。
でもそうだ……怖い。死ぬ事が怖いんじゃない。アルフィナ様を失う事が怖いんだ。
「あら、いないと思ったらこんな所にいたのね」
いつの間にか、麻袋に入った揚げた芋をもりもり食べながらメアーズ様が仁王立ちしていた。
「ちょっと目を離すともうこんなに汚れて。今日はしっかりと洗っておきませんとね」
そう言いながら、ひょいと摘まみ上げられる。
アルフィナ様だけじゃない。メアーズ様も、ミリーちゃんも失いたくはない。
でも僕は万能じゃない。何があるかも分からない。いざという時、みんなを守れる力なんて無いかもしれない。
それが怖い……でも、目をそらしちゃだめだ。逃げちゃいけない。
怖いなら――怖いからこそ、立ち向かって、考えて、知って、対処しなくちゃいけないだよね。
というか、結局町を見て回ることは出来なかった。
でも良いや。一人より沢山。今度はみんなで一緒に、もっと大きな町を見て回ろう。
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