別れ
――下に無くても上にあるんだよ! その
――入れ入れ! もう穴なら何でもいい!
――全員行けー! 突入だー!
それと同時に、僕ら拘束触手も手足に巻きついた。
――やっちまえー!
――いーけーいーけー!
ドスンという音と共に
――だめだ、こいつ胃が無え!
――肺も無いぞ! どうなってやがる!?
「ぶふぉふぇふぉは、ふぁふぉふぉふぁふぉふぉふぉふぉほ、ふぁへふぉふぉふぉおうばふぉふぉばふぁひふぁ」
翻訳しておこう。
ブハハハハ、下等なものどもよ。我にそのような物はないわ。
……って言っているよ。
こんな状況になっても、
――無いなら無いで良いんだよ!
――とにかく突っ込め!
――出せ、出せ!
「ぶはっ! ぶはっ! ぶへほ!」
もう何を言っているかも分からない。
――この際だ、俺達の媚薬も喰らえ!
エリクセンさんら注入触手の針が
そして触手の根元からは、ボコンボコンと水玉みたいのが幾つも送られていった。あれがきっと媚薬というものなのだろう。
「ぷごぉおおぉぉお!」
――お、効いてる効いてる!
――やっちまえー!
この時、僕らは全く気が付いていなかった。
こちらに迫ってくる、斧を持った男の存在を。
ザシュッ――!
――ローマンさん、アラドさん、ケティアルさん!
千切れた触手が宙を舞う。
「ふんぬー!」
再び振り落とされる斧。何度も、何度も、何度も。
そのたびに弾けるように飛ぶ黄色い体液。僕たちの体を流れる血潮。
――カーツさん、ケルンストさん! やめろ! やめろぉー! 僕たちは敵じゃない。違うんだ! やめてくれー!
だけど言葉は届かない。男は斧を振り下ろすことを止めない。
――ダメだ! 幾ら攻撃しても、
大丈夫、僕一本が外れても、まだ仲間たちが抑えている。今は
――もうやめて! 話を聞いてください! 僕らは――
必死になって懇願する。だけど斧が振り下ろされると同時に、ものすごい喪失感が僕を襲った。
――え?
痛みは感じなかった。ただ、ポトリと落ちた。僕の体は、先端の30センチほどを残して斬り落とされていたんだ。
――あ、ああ……。
どうなるんだろう? これが死ぬって事なのだろうか? また? 僕はまた死んでしまうの?
急速に何かが失われていく。最初の時は一瞬だった。考える間もなく、痛みを感じることも無く、ただ死んだ。
でも今度は恐ろしさを感じる。いやだ――みんな――みんな!
仲間たちが斧で滅多切りにされているのが判る。だけど
もう終わりだ……馬鹿な戦士。きっと、仲間たちがみんな死んだらあいつも殺されるんだ。
その頃には僕も死んでいる……これが、結局僕の運命だったんだ。
町……行きたかったな…………。
――ああ、行けるさ。お前ならな。
――プランクさん?
――そうだな、俺もそう思う。
――ふぉふぉ、きっとそれが定めなのだろう。
――エリクセンさん? 先生?
――行け、クレス。達者でな。
――頑張れよ。
――お前が一番若いんだ。しっかりやれよ。
――これが運命という奴さ。
――お別れだ。いい女に出会えよ。
僕の切断面に何かが触れる。だけど短くなりすぎて、また周りが完全に把握できない。
これは触手? 誰?
――神の加護あれ。
僕の体が、ポンと宙に舞った。
そのまま壁に当たり、排水溝にぽちゃんと落ちる。
――待って、ちょっと待ってよ! みんな! なんで! どうして!
流れは緩やか。だけど僕は泳げない。まるで意志のない流木のように流される。
背後で
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