第6話 実験

「これから実験を受けてもらう」


「じっけん…?」


「軽い実験だ」


 ついてこい、という仕草を表し、僕は何となく後をついていった。


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「がっ、あ……あ…」


 片腕が切断され、血が止まらない。

 激痛が走り、細胞が分裂と統合を繰り返す。


「自己再生は良し。あとは食物を受け付けるか……」


「もう…止めてくださ……ぃ」


「駄目だ。喰え」


 息が荒く、意識が朦朧とする中で、うつ伏せになっている僕に肉塊を差し出す。

 匂いを軽く嗅いでみると、生臭くなく、食欲をそそる良い香りだった…。


 でも、食べてはいけない。

 そう、脳内でサイレンが鳴り響いていた。


 しかし、僕の欲求は止まらない。


 一口食べると、全身が宙に浮いていった、軽くなった感覚がした。


あるのは快楽だけ。


こんなの、人間の時に得られるものとは違う。


「よっぽど空腹だったみたいだな。罪悪感もゼロ。人間ヒトを喰っているんだが」



……人間ヒト


………僕は、ヒトを食べた?




「嘘……だ…」


「それは紛れも無い真実だ。いい加減、自分が何者かを考えろ」


僕は何も、考えられない状態に陥っていた。

何も耳に入って来なくて、何も視界に入って来なくて。


その後は、何があったかは知らない。




河村は倒れ伏せ、何故か翼が生えていた。

それは無惨に崩れ落ち、血塗れになっていた。





僕は慣れない、新しい身体で建物を飛び出した。

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