第2話
そこに立っていたのは一匹の白うさぎでした。
「寒い寒い寒いっ。
あんまり寒くて耳にしもやけができちまった。
お嬢さんたち、ちょっとストーブにあたらせてくれませんか。
こう寒くっちゃ、そうでもしないことにはやりきれない」
うさぎは怒ったように言いました。
「ええ、いいわ。
ちょうど、熊さんも来ているのよ」
「おお、助かりますよ」
うさぎはぴょんぴょん飛び跳ねて入ってきました。
ふたごはその耳に軟膏を塗って、乾かないように包帯を巻いてやりました。
それから熱いお茶をいれてやりました。
「ああ、やっと痛みが薄らいだ。
ありがとう。本当に、ありがとう」
ウサギは喜んでお茶を口に運びました。
「そうそう、雪の中にしまっておいたキャベツと人参を掘り出して持ってきたんですよ。
お礼にぜひ、召し上がってくださいよ」
「まあ、それはご丁寧に、ありがとう」
双子はキャベツと人参を受け取りました。
みずみずしいキャベツと人参です。
その薄緑色とだいだい色が、冬の暗さに慣れた、ふたりの目に、にじむように眩しく映りました。
皆で暖まっていると、今度はコツコツと誰かが扉をつつく音がしました。
聞こえるか聞こえないかくらいの遠慮がちな微かな音です。
開けてみると、小鳥たちが何羽か、めいめい麦の穂を一束ずつくわえて立っていました。
小鳥たちはいっせいに声を揃えてさえずりました。
「寒くて体が凍りそうなの。
どうか中へいれてくださらない?」
「ええ、どうぞ。
みなさん、入ってくださいな」
「どうぞ、火のそばに寄ってね」
小鳥たちは今度は口々に言いました。
「ありがとう。
わたしたち、体が小さいから、冷えるのも早くって。
みんな冷え切ってしまったの」
「でも、わたしたち、温まるのも早いから、そうしたら部屋の隅にいさせてくださいな。
そうすれば、もっと寒い思いをしている方が火のそばにいられるでしょう?」
小鳥たちが体を温めている間、双子は熱いお茶を小さい深めのお皿に入れて出しました。
そして、小鳥たちがそれを飲んでいるうちに、麦の穂をしごいて粒を集め、それを挽いて粉にしました。
それから、こぼさないように注意して袋に入れると、戸棚の下の扉の中にしまいました。
またしばらくすると、とん……とん……、と誰かが扉を叩きました。
のんびりと間延びした音です。
開けてみると、牝牛が雪にまみれて立っていました。
「こう寒くちゃ、お乳がかじかんで、ミルクが出なくなってしまうわ……。
どうぞ中へ入れてくださいな」
「ええ、いいことよ。
お入りなさいな」
ストーブの傍らで、双子の入れたお茶をぴちゃぴちゃ舐めて温まると、牝牛は元気になってミルクをどっさり出しました。
双子はそれをきれいなバケツに受けて、悪くならないように隣の台所の隅に置きました。
また少しすると、今度は「コンコンコン、コンコンコン」という規則正しい音がしました。
双子が扉を開けると、めんどりが一羽、吹きつける雪を浴びていました。
「おお、寒いったらありゃしない。
こう寒くては、卵が凝って、出て来てくれなくなってしまう。
どうかわたしも温かい部屋にいさせてくださいな」
「ええ、寒かったでしょう。
早くお入りなさい」
めんどりは体がぽかぽかしてくると、喜んで卵をたくさん産みました。
双子は卵が壊れないよう、そっと集めて、大切にかごに入れました。
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