第952話 【番外編】アマビエさん、情を示す

「さて、そろそろホタテにいくか」


 僕はホタテペーストに箸を入れ、ゆっくりスープと混ぜ合わせていく。それからおもむろにスープをすすると、味の変化にびっくりした。


「うわ、海鮮の出汁が強くなった……!」


 鶏の面影がさらっと消え、ホタテの旨みが完全に前に押し出されてくる。溶かす前と後では、明らかに別物だ。僕はしばらく夢中で食べた。


「ヤクザ」

「え?」

「交換」

「ああ、そういう約束でしたね」


 僕たちは丼を交換した。アマビエさんにも少し情はあるらしく、麺が一口分とチャーシューが一枚だけ残っている。……この欲張りめ。

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