第894話 【番外編】アマビエさん、花に見とれる
「和歌でもよく愛でられてきたものだからな。最近はあまりまとまって咲くのも見な
くなってきたが……やはりいいものだ」
アマビコさんが目を細めている。
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし……と言いますが、皆が大騒ぎしているのを見ると、昔も今も変わってないんですね」
パートさんがつぶやいた。
「どういう意味ですか?」
「もしこの世に桜というものがなかったら、春の人々はもっと穏やかだったろう。桜がいつ咲くか、散るか気にすることもなくて……という歌です」
確かに予想に一喜一憂する現代人にも通じる。
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