第887話 【番外編】アマビエさん、動物園に入る

 僕は兎のボールペンのことを思い出していた。中年男性が持つにはファンシーすぎる気がしたが、あれも動物好きの一環だったのだ。聞くと納得だ。もしかして、家でも何か飼っているのかもしれない。


「あ、来た来た」


 噂をすればなんとやらという言葉通りに、パートさんが手を振りながら現れた。カジュアルな長袖のカットソーに、だぶっとした綿のパンツをはいている。なぜか手元にはカメラではなく、メモ帳を携えていた。


「遅くなりました」

「いや、僕たちも今来たところだから。入ろうか」


 入り口でチケットをちぎってもらい、僕たちは中に入った。

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