第793話 【番外編】アマビエさん、提案する

「ヤクザよ。そろそろお前の家に招かれてもいい頃だと思うが」

「そういうことは、客側から言うもんじゃないですよ」


 だらしなく待合の椅子に転がって腹をかくアマビエさんに、僕は言い返した。


「片付けたとヨゲンノトリから聞いたぞ」

「その時にお金が出て行ったので、今は何かする余裕がありません」


 僕はわくわくしている妖怪に釘を刺した。


「玉露のおもてなしで構わんぞ」

「そもそもうちにないです」


 高級茶を要求する妖怪は初めて見た。


「アマビエは抗議する」


 アマビエさんはしばらく携帯のバイブのごとく小刻みに揺れていたが、僕は無視した。

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