第701話 【番外編】アマビエさん、袖を引く

「あなた、花粉症も知らないの?」

「そんなものは知らぬ」


 海の中で暮らす妖怪アマビエは力強く言った。……そりゃそうか。


「いいなあ……私も海の中に潜りたい……花粉が来ないところへ……」


 事務の子が完全に遠くへ行ってしまい、自分の世界にひたっている。ただならぬことだ、ということくらいは伝わったらしく、アマビエさんが青くなっていた。


「そんなに大変なものなのか?」


 アマビエさんが僕の袖を引き、聞いてくる。


「はい。良かったら今度、薬局で解説してあげますよ」

「うむ、約束だぞ」


 そんな約束を交わして、僕たちは夜道を歩いた。

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