第309話 【番外編】アマビエさんの過去②

「まだまだばあちゃん元気だから、そんな顔するなって」

「うい」

「引き継ぐといっても、戸惑いはなかったんですか」


 妹が聞くと、社長は笑った。


「いやあ、さすがに引いたよ。俺、ばあちゃんほど信心深くないからね。そしたらアマビエが聞いてきたんだ。自分は予言能力を持っているが、それを使って金儲けしないかって」


 僕はびっくりした。そんな話、アマビエさんから一度も聞いたことがなかったからだ。


「……それで巨万の富を築いたんですか」

「ううん。断った」


 社長はあっけらかんと言った。アマビエさんが笑顔を取り戻し、手を振る。

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