第297話 【番外編】アマビエさん、お願いする

「ほら、外見てみましょう。景色が動いてますよ」

「ほ、ほう……」


 アマビエさんはおそるおそる覗きこんだ。最初は腰が引けていたが、徐々に子供のように窓に張り付いていく。


(やれやれ、良かった)


 一旦馴染んでしまえば、過度に恐れないのがアマビエさんである。これで電車も克服だな、と思った僕たちは手を離した。


「ヤクザとその妹よ」


 正面を向いたまま、アマビエさんが言った。


「はい?」

「離すな」

「え?」

「だから手を離すな」

「……わかりましたよ」


 まだちょっと怖いようである。結局、僕らは降りるまで手をつないだままだった。

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