第208話 【番外編】アマビエさん、肉を焼く

 正方形の灰色石が、コンロで熱されている。僕は手をかざした。


「熱くなりました。いいんじゃないですか」

「うむ」


 アマビエさんは箸を使い、肉を石に載せた。じゅう、と美味しそうな音がする。


「牛だから、さっと焼くだけで」

「さーっ」


 アマビエさん、こういう時は素直である。まず、シンプルに塩だけで食べてもらうことにした。


「…………」

「熱いですか?」

「二百年の豊作を約束する」

「景気がいいですね」


 もはやその期間通しで生きている人間はいなくなったが、比喩表現につっこむのはよそう。アマビエさん、最近真面目な予言をしていない。

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