第二部「大家さんには向いてない」
第20話「102号室」
第20話-A面 時任秋良は朝を迎える。
気になることがあって、目が覚めた。
当の
目覚まし時計が一度鳴り、二度鳴り、三度鳴り、ようやくアキラは目を醒ました。
「あれ? 天井……あ、そうか。引っ越したんだった」
そう、アキラは引っ越した。
元の家の建っていた場所に新築されたメゾン・ド・トキトウの101号室にだ。
このアパート、2DKもあって学生の一人暮らしには随分と広い。つーか広すぎる。過保護な親だ。
「おー、起きたかアキラぁ。珍しく早起きじゃねーか」
いつもなら五度鳴っても起きねえもんな。
「レーコさん、おふぁようございまふ」
アキラはくしゃくしゃの髪で半開きの目を擦ってゆっくり起き上がる。
ったく、しゃーねーなー。
「ちゃっちゃとシャワー浴びてシャッキリしてこい」
「ふぁ……い」
浴室にアキラを放り込み、アタシは冷蔵庫から食パンを出し、トースターにイン。電気ケトルのスイッチを入れる。あー、実体化だりー。クソったれ。
パンが焼けるより、なんなら湯が沸くより早くアキラは浴室から出てきた。
「はえーよ! ちゃんと髪洗ったのか!?」
「洗いましたよぉ」
「そんでびっしょびしょじゃねーか! ドライヤー使えや!」
「タオルで拭きましたし、短いからすぐ乾くんですよ」
「髪のケアをちゃんとしろ! だからそんなにすぐハネるんだよ」
「これは癖っ毛なんですよ……」
「やかましいわ。いいからドライヤー持ってきてココに座れ」
ってなんでアタシはこのバカの髪を乾かしてやってるんだ……。
「ふわぁー。人に髪の毛触られるの気持ちいいですねー」
だからそのメス顔はやめろ。
そのあと、パンとコーヒーだけの雑な朝飯を食わせて、身支度をさせる。
なんだアタシは? メイドか? 家政婦か?
「わぁ、八時前に準備できましたよ僕」
「オメーは何もしてねえけどな」
朝からガッツリ疲れたわ。
とまあ、それはさておき、だ。
アタシは玄関の方に視線を向けた。
あるのは玄関のドア。
アタシが朝から気にしているのはその向こう、外にある気配だ。
「まだ居やがるか」
つーことは、アキラ狙いか。
めんどくせーことにならなきゃいいけどな。
「いきましょうレーコさん」
「うーい」
何も知らないアキラが玄関のドアを開けると、そこには朝日を反射する禿げ頭がヤンキー座りで待っていやがった。
おおっと、アタシの想定以上のが来たなオイ。
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