第19話-B面 時任秋良の不幸は続く。


 なんだかよくわからないけど、笑美ちゃんと瀬戸さんがぼくに抱き着いてわんわん泣いています。

 これは、どうしたら?

 助けを求めてレーコさんに視線を向けたんですが、


「知るかバーカ。テメエでなんとかしろ」


 冷たい反応です。


「えっと……」


 どうしよう。

 おたおたしている僕のスマホの着信音が鳴りました。

 相手は――


父さんあの人、か。ちょっとごめんなさい」


 泣きじゃくる二人を引き離すこともできないままに通話ボタンを押しました。


「もしもし」

「私だ。アキラ、お前の住居だがな。元の場所に新築した」

「はい?」

 新築?

「アパートを新築した。お前はそこに住んで大家をやれ」

「えっ?」

 アパート? 大家? 何の話ですかそれは一体。

「お前は『ひとりで生きていきたい』と言ったな。最低限の準備はしてやった。入居者も二人、用意してある。残り七部屋は自分で埋めろ。細かいことは101号室、お前の部屋に置いてある。ああ、それから家賃は自分で集金しろ。以上だ――」

「あっ」

 一方的にまくし立てられて通話は切られました。

「大家さん……? 僕が……?」

「くっくっく。すげーオヤジさんだなあ。ま、頑張れや」

 楽しそうにレーコさんは笑っていました。


 どうやら、僕の不幸はまだまだ継続中のようです。

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