第15話「お出かけ」
第15話‐A面 毒島玲子は世話を焼く。
新聞配達のボロいカブの音で目が覚める。
朝か。
日の出はまだだ。カーテンの隙間から見える外はまだまだ暗い。
アキラも目を覚ましたらしい。
ガキみたく布団にくるまるようにして二度寝の体勢。
そんなにエミと出掛けるのが億劫なら断ればよかったのに、難儀なバカだ。
ま、もうちょっと寝かしておいてやるか――
「――っていい加減に起きろやバカ!」
もう八時前だぞ。いつまで寝てやがんだ。
「あと五分だけ……」
「やかましいわ!」
アタシは右手を実体化させてアキラの布団を剥ぎ取ってやった。
「うぅ」
「さっさと起きてそのツラ洗ってこい」
「ふぁいぃ……」
「ほれ、トロトロすんな」
アキラを部屋から蹴り出し、付いていく。
ん。この匂いは……。
あーあー、エミのヤツは張り切ってやがんなあ。
アキラとのこの温度差よ。
朝飯を食って部屋に戻ったアキラはまたベッドに潜り込もうとしてやがる。
「待てコラ」
「はい?」
「オマエ、昨日エミと約束したこと覚えてるか?」
「十時からおでかけ、ですよね」
「だったらその準備しろや」
「九時半くらいからで間に合いますよぅ」
「頼むから、ちょっとは気合い入れてやれ。マジで」
エミが不憫すぎんだろーが。
「はあ」
「とりあえず服選べ、服」
つってもアキラの手持ちの服は火事の日に着ていた制服だけだ。
この部屋にはケースケの昔着ていた服だ。
サイズが合わないものしかねーが、
「なるべく小さいのを探せ」
「じゃあ、コレですかね」
アキラが出してきたのは黒のパーカー。
ちょっと古いデザイン。
これが一番小さい。それでもアキラだと袖が余るが、それはそれでまあ。
「ま、いいだろ」
ボトムスはジーンズしかねーな。
これまた死ぬほど裾が余るのでグリグリに折り返す。
あとは髪だな。
「そのボッサボサの頭なんとかしろ」
「と言われましても……」
「もういい。アキラ、オメーそこの鏡持ってきて椅子に座れ」
言いながらアタシは両手を実体化させる。
机の引き出しにケースケのものらしきヘアワックスがあった。しゃーねえ、コレでいっか。
「レーコさん?」
「いいから座っとけ」
アタシはアキラの髪をセットしてやる。
「くすぐったいです」
「我慢しろ」
鏡の中のアキラは笑うのを我慢してか口をむにむにさせていた。
それにしても、なーんでこんなことをしてんのかねえアタシは。
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