第11話「お手伝い」
第11話-A面 三波笑美にはわからない。
三週間ほどでアキラちゃんの右腕のギプスが取れた。
そのこと自体はすごく良かったし、私も嬉しい。
嬉しいんだけど、その、ちょっと問題があって。
夜な夜なアキラちゃんの部屋から、喘ぎ声が聞こえてくるのだ。
「うっ」とか「ああっ」とか。
……やっぱり右手が使えない間に、こう、色々我慢していたのかもしれない。
朝、洗面所で顔を洗っているアキラちゃんに会った時。
「おはよう、アキラちゃん」
「あ、おはようエミちゃん。ちょっと待ってね」
「うん、大丈夫。ゆっくりでいいよ。ところで、さ」
私は意を決して切り出した。
「夜ね、あの、私に、その、なんていうか、手伝えることがあったら……、あ、あの、い、言ってくれていいからね……」
言っちゃった! 恥ずかしくて死ぬ!
そんな私とは裏腹に、アキラちゃんは洗った顔をタオルで拭きながら、
「うん、ありがとう! 今度お願いするね!」
と、超いい笑顔だった。
「えっ」
そのリアクション、な、なに?
お願い、されるの?
夜の、その、お手伝いを? え、ほんとに? 私が?
「エミちゃん、お先に」
アキラちゃんは洗面所の場所を譲ってリビングの方へ向かっていく。
私はその姿を見送ってから、自分の顔を鏡で見た。
顔どころか耳まで真っ赤になっていた。
私は紅潮した頬を両手で抑える。
「今の、どういう意味で言ったの? 私、アキラちゃんのことがわからないよぉ……」
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