第41話
「しかしこれだけで良かったのか?」
ルミナリスがウェルドレッドの傷口を訝しげに眺める。すると、プリシラの首を伝ってベリトが下りてきた。
「魔法臓器を潰しておけば大丈夫だとは思うけど……一応ベリトの毒を流すから、効いたのを確認してからあっちに行こう」
するすると這って身体を登っていき、ウェルドレッドの首元に噛みつく。
「……それにしても、こんなに簡単に終わるなんてね」
ただただ立ち尽くして横になっているウェルドレッドを眺めて呟いた。
「どんな恨みがあったんだ?」
「両親を殺された」
プリシラが即答すると、少しの静寂が訪れる。ルミナリスは「そうか」とだけ言って黙った。
プリシラが机の上の書類を読んでいると、あるものに気が付いた。
「これってルミオのことじゃない?」
「そのようだな。魔法臓器とやらの研究をしていたようだが、お前とハルシウスも口にしているその魔法臓器とはなんなんだ」
「皆持ってる臓器で、ここにある」
自分の鳩尾を指差す。
「大気中の成分を取り込んで、それを貯めたり、魔力に変換してるらしいよ」
「ほう。それが一体ルミオと……と思ったが、これか」
二人の目が止まる。
「もともと光属性の強い臓器だったのにそれに魔獣の臓器を加えてみた訳か。しかしあいつが上手く魔法を使えていない辺り失敗だったようだな」
「いや、それならルミオ一人をあそこまで探す必要ないんじゃない? ルミオ自身も知らなかったみたいだし、もしかしたら二つの魔法が邪魔しあってたのかも……」
二人が机の書類に向き合う後ろで、ボコボコと沸騰するような音がする。咄嗟に振り向くと、ゆっくりとチェスリンが立ち上がっていた。全身が、特に両肩が盛り上がっていく。それに反応するように二人は後ろを見ずに後ずさった。
「おいおい、まだ生きてるじゃねえか」
「そんなはずは……」
目が座っておらず、うめき声を上げるだけで二人の声に全く反応しない。ベリトがプリシラの肩に戻って威嚇する。チェスリンの両肩が更にボコりと盛り上がった。
「魔獣にでもなっちまったのか!!」
ルミナリスが一瞬で距離を詰めて右拳で心臓を狙う。
しかし、後数ミリのところで突然現れた壁に阻まれた。肩の盛り上がりは皮膚を通して青く光っている。
「……まさか魔法臓器が他にも⁉ 逃げるよ!!」
プリシラはルミナリスの左手を掴んで走り出した。
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