第42話

 プリシラはルミナリスの左手を掴んで走り出した。ルミナリスは一瞬掴まれた手を見て睨むが、諦めると握られたまま自分の足で走り出す。

「飛んで!」

ドアを開けると、プリシラはジャンプした。廊下一面が泥の海になっていて、それに素早く気づいたルミナリスも地面を蹴る。

「サレミール!」

プリシラが空中で右手を遠くの天井に向けると、手首から輪を描くように何本ものツタが伸びた。急速に成長するツタは天井に絡みつくと、二人を引っ張る。追いかけようとしたチェスリンは二人に集中しすぎて泥の海に気づかずに溺れる。ゆっくりと沈んでいるにも関わらず、慌てることなく身体を動かさないで二人を睨む。

「今のうちに逃げて別のところに誘い込むよ」

「それなら急いだほうがいいぞ」

チェスリンの口が大きく開き、その前には大きな光の球が徐々に出来上がる。ルミナリスは足を振って右の壁に寄ると思いっきり蹴って反対の壁に飛んだ。同時に、チェスリンの口が大きく開いて、廊下全域を光線が埋め尽くした。

 

 プリシラとルミナリスは外から棟が崩れるのを見ている。

「あいつは何をしたんだ……」

「両肩が盛り上がってたでしょ? もしかしたらあの二つが魔法臓器かも。ハルから離さないといけないから、今のうちにあそこまで行くよ」

プリシラは大きな音をたてて流れる滝を指差すと、走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る