第39話

 三人は研究所を遠くから木々に隠れて眺める。しかし、ここからでは遠すぎて中の様子は分からない。

「やはり見張りが居ないことくらいしか解らぬのお。わしがちょっと見てこよう」

そう言ってハルシウスは音を立てずに走って行った。

「チェスリンを倒すための策は既にあるのか」

ルミナリスが尋ねる。

「ウェルドレッドに変身しようと思ってたけど今回はちょっと工夫しようかな。相手は護衛軍だから、簡単には行かないと思う。その時は……」

暫く二人で話し込んでいると、ハルシウスが帰ってきた。

「作戦を建てとるようじゃな。中の様子が少し分かったぞ」

ハルシウスは建物を指差しながら説明し始めた。

「先ずはあの棟。廊下に沿って小部屋がいくつも並んでおる。こちらから見て一番奥の部屋にチェスリンはおったぞ。他の部屋には誰もおらんかった。次にその棟の横にある大きい建物。そこからウェルドレッドが出入りするのを見た。中は詳しく見えなかったが恐らくこちらにルミオがおる」

「どうしてルミオがそっちに居るんだ」

「入口から地下に続く階段に降りていくのが見えた。滝の音がうるさくてちゃんと聞こえなかったが、恐らく地下からの魔獣の叫び声もした。チェスリンがいる方には居なかったことを考えるとこっちじゃろう」

プリシラが研究所から少し離れた滝を見ると、一本の石を切り出したような杖を取り出す。

「この杖の産地だね。ありがとう、ハル。二人が別々なら都合が良さそうだね」

「うむ。チェスリンの方はわしとの闘いのダメージが残っておるようじゃったし、二人に足止めだけでもお願いしてよいかの?」

ルミナリスが眉を上げる。

「何を言っている。ハルシウスはウェルドレッドを倒してルミオを取り戻すだけだ。後はこっちでやる」

「そうだよ。こっちは私たちに任せて」

ハルシウスは呆気に取られる。

「お主ら、協力出来るのか」

二人がそれぞれ不快そうな顔をする。

「最初は仇は一人で取るって決めてたけど、皆と旅をして変わったのかな。敵討ちには変わりないけどルミオを助けると思ってルミナリスと協力してあげるよ」

「別に俺はタイプが違うだけで協力する気が無かったわけではない」

「……お主らも成長したようじゃな。では、行こうではないか‼︎」

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