第38話

「先ずはやつらの行き先じゃ。わしとルミナリスでは見当もつかなかったがプリシラは何か心当たりはないのか?」

「うーん。メイティでは急いでいたしあんまりチェスリンのことは聞けてないんだよね」

「ではやはり戻ってやつに聞くしかないかの」

三人はメイティへと向かった。来るときには慎重に、かつゆっくりと進んでいた険しい崖も早足で進む。

「二対一とは言えわしを倒すとはあいつらもやるよのう。自分を傷つけ始めた時は驚いたが」

「あれは一体何をしたんだ。格段に魔力が上がっていたが」

「多分魔法臓器を刺激したんだと……思う。今までにそんなの聞いたことないけど」

プリシラは頭を捻るが何も思い出せない。

「二人の傷口を考えるとわしもそうじゃと思うぞ。そしてその前に飲んでたのは恐らく気を失わぬための鎮痛剤じゃな。しかし一人ならわしもなんとかできようが二人となるとやはりきついのう」

「……私にチェスリンは相手させてもらってもいい?」

突然の提案に二人は少し驚き、説得する。

「一体どうしたのじゃ。お主一人では厳しいのは分かっておろう」

「そうだぞ。それにハルシウスとお前で一人一人担当したら俺の相手がいなくなるじゃないか」

「うん。分かってるんだけど……二人は見た? ルミオが本の中に吸い込まれているところ」

ルミナリスは何の話だといった顔をするが、ハルシウスは頷いた。

「うむ。ルミナリスはウェルドレッドとの闘いで倒れておったからのう。知らぬのも無理はない」

「ハルは見ていたんだね。……あれが秘宝の一つ、『無限の書』なんだよ」

「なんじゃと!? ということはお主はあの男に因縁があるということじゃな」

「そう、だからどうしても私が相手をしなきゃ……」

プリシラが表情を変えずにわずかに唇をかみしめる。

「それなら尚のことルミナリスと協力するのがお互い良いのではないか? 二人で協力せねば勝てぬ相手じゃろう」

「そうだぞ。プリシラがこの中で一番戦闘に向いてないだろ」

「分かってる。だから今回も暗殺するよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る