第37話
「どうしたもんかのお」
横たわり意識を失っているプリシラを挟み、ハルシウスとルミナリスが向かい合って座る。周囲では何匹もの竜が横になって休んでいる。もがれていたはずの翼は縫われてくっついているが、動かすものはいない。
「追いかけるに決まっているだろう」
「それは勿論分かっとる。しかし……」
プリシラがガバッと勢いよく身体を起こす。
「チェスリンとルミオは⁉」
一瞬二人を見て、直ぐにキョロキョロと周囲を探す。ルミナリスが低い声でぽつりと呟く。
「もういねえよ」
プリシラは落ち着くと、が肩を落とす。ハルシウスが両手をパンと叩いて二人の注目を集めた。
「今後のことも話すべきじゃが……先ずはプリシラの知ってる話を聞きたいのう」
ルミナリスもプリシラを見る。しばしの沈黙の後、プリシラは語り始めた。
「……オットガルがアイシスって名前の花を使って覚醒剤を作ってたよね。あれはチェスリンに命令されてたみたい。そしてそこで得た莫大な資金の一部を使ってルミオを探すように命じられてたの」
「ほう。つまりルミオは元々研究施設で隔離されてて、何かしらがあって外に出ていたたのじゃな」
「だがあいつはその研究所の記憶こそなかったようだが集落での記憶を持っていたぞ。あれはなんなんだ」
ハルシウスが顎に右手を当てながら考える。
「あれは研究所に入れられる前の話じゃろう。曖昧な記憶は最近のものが多かった。恐らく研究所に入れられる前は本当に集落で暮らしておったのではなかろうか」
プリシラが頷く。
「うん。オットガルの話でもそんな感じだった。詳しくは分からなかったけどルミオの一族は光魔力の強さに魔法臓器の特殊性、加えて細々と独自の魔法も作ってたみたい。それが見つかって実験の対象になったのかも」
「チェスリンもルミオの一族について同じことを言っておったぞ。まあわしと張り合った勇者の一族じゃ、無理もない」
黙って話を聞いていたルミナリスがしびれを切らした。
「細かいことはもういい。ルミオを連れ戻すのが先だろ」
パシン、と左手で右拳をキャッチする。その顔は笑っているものの、怒りがにじみ出ている。
「分かっとる。先ずはやつらの行き先を探らねばな。ここでは終わらぬ、失われたものを取り返すぞ」
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