第27話

 ルミオとルミナリスの二人はメイティの外れの森に居た。ルミオは木の頂上から目を細めて街の様子を見ている。街では魔法を唱えて水を打ち出したり、川から水を運んで消火活動が行われている。

「僕たちの宿以外の建物には燃え移ってないし、どうやら消火は無事に進んでいるみたいです、よかったですね」

ルミナリスは木に身体を預けて座り込んでルミオの話を聞いていた。右拳を握ったり開いたりして体調を確かめる。

「俺はどうでもいいと言ったろ。それよりやつらはまだか」

上に立つルミオを見上げる。

「そうですね……あっ! ハルさんは来ましたよ」

ハルシウスはルミオに気づいていたようで、手を振りながら向かってきた。数分後、ハルシウスが到着した。

「遅れてすまぬ。……て、お主は何をしとるのじゃ?」

木にもたれかかっているルミナリスを見て怪訝な顔をする。ルミナリスは立ち上がろうとするが、崩れ落ちて諦めたようにため息をつく。

「あの花にやられたんだ。お前こそ大丈夫なのか?」

ハルシウスは何のことだと首を傾げてしばらく考える素振りをしていたが、何かに気が付いたように話し始めた。

「あー、『アイシス』のことじゃな」

「知っていたんですか?」

ルミオが木の頂上から一気に飛び降りてきた。

「うむ。おおよそ覚醒剤にでも使ってたんじゃろう。ドームや宿を見る限りそれでかなり儲けていたようじゃな」

ルミナリスはペッシモの話を思い出して納得すると同時に、ハルシウスに疑いの目を向ける。

「確かにそんなことも言ってたな。……さては使ってただろ」

ハルシウスは隠すことなく堂々と頷くと、胸ポケットからアイシスを取り出して匂いを嗅ぐ。

「もちろん。城の畑で育てとったわ」

三人が話していると、プリシラもやってきた。

「待たせてごめんね。じゃあ行こっか」

「もう終わったのか?」

「うん、今回はとてもはかどったよ。良い情報も手に入ったし。それに……」

プリシラはルミオをちらりと見た。ルミオはそれに気づいたが、どうしたのかと首を傾げる。

「街の人に犯人と勘違いされてもだし、ここから少し離れよっか」

ルミオを見るプリシラの目は少し陰がかっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る