第21話
ハルシウス、ルミオ、プリシラにルミナリスの加わった四人は集落を出て、プリシラの次の仕事に向けてメイティに向かっている。
「そう言えばルミナリスは杖を持っておらぬのじゃな」
道中でふと、ハルシウスは尋ねた。ルミナリスは頭の後ろをぽりぽりと掻きながら低い声で答える。
「魔法を人並みにしか使えないし、体術に集中したいから要らない。お前らは持ってるのか?」
ハルシウスとプリシラは杖を黙って上げて見せる。
「僕は持っていません。人並みにすら魔力がありませんから」
ルミオは代わりという様に槍を見せた。三人を見てルミナリスは納得したようで、再び前を向こうとした。
するとプリシラの右手に握っていた杖が、これは使い魔のベリトが変身したものであったのだが、蛇の姿に戻って右肩から首を一周して左肩に移動した。ルミナリスはこれを見て少し顔を驚かせた。
「ほう、生きている気配を感じていたがそれは蛇だったのか。メフロンで同じように魔獣を杖や拳に纏わせて戦うやつを何人か見たことがある。皆なかなかのやり手だった」
プリシラはふーん、と興味無さそうに答える。
「相性の良い魔獣を見つけて契約を結ぶまで行く必要があるからね。私も運が良かったのかも。あとこの子の名前はベリトだから」
思い出したようにルミオは尋ねる。
「そう言えばプリシラさんはベリトとどうやって出会ったんですか? ずいぶんと仲が良さそうですが」
「私が学校に通っていた時だね。両親が博物館をやってたから、暇な私はよく学校の図書館で本を読んでいたんだけど、ある日この子が隅に隠れているのに気付いたんだ。その時はまだこの子も小さかったから、誰かに見つかって殺されるのを怖がっていたのかもしれないね。私は興味が無かったからそのまま本を読んでいたんだけど、図書館に来るたびに毎回私の近くに居て、いつの間にかそのまま図書館以外にもついてくるようになったの」
そこでハルシウスに新たな疑問が生まれた。
「魔力の相性が良い者と契約を結ぶ必要があると言っておったな。つまり初めはベリトに使い魔の適性があることを知らなかったのか?」
「そう、使い魔の契約を結んだのはまた暫く先の話。それはまた今度にでもするよ。ほら、もう見えてきた」
丘からは見下ろすと街が見えた。ハルシウスとルミオの出会った街よりも規模が小さく人通りも少ない。しかし、その代わりにメフロンとは異なり広大な花畑が広がってのどかな雰囲気が出ていた。花畑を見てルミオが喜んだ。
「とても平和そうな良い所ですね。これくらいが僕はちょうど良い感じがして好きですね」
「ドリスの横だけど別に何か人が集まる様な特徴も無いからね。確かに静かで良い所だと思うよ。私も実は初めてなんだけどね」
四人はその日は街に着かず、野宿をして明日向かうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます