第15話

 ハルシウスがルミナリスと試合をする直前。ここはとある警備会社本社の一室だ。中では一人の魚人の男が両手に持つ書類を持って笑みを浮かべて座っている。

 コンコン、とドアを叩く音がした。男はびっくりして手に持った書類を落としそうになる。書類を机の上に置いて一旦落ち着くと、不審に思い、ドアをじーっと見た。

「こんな時間に誰だ、入りたまえ」

不機嫌な口調で招き入れると、入ってきたのはプリシラだった。

「お、お前は誰だ! 不法侵入だぞ!」

見知らぬ女の訪問に男は驚き、急いで護身用のナイフをポケットから取り出そうとするがプリシラは既に魔法を唱えて杖から水の塊を二つ、勢いよく打ち出していた。水は男の両手を覆い、自由を奪う。水中を漂うナイフを握ろうと右手を開いたり握ったりを繰り返す間に、プリシラはゆっくりと近づいてくる。

「いやあ簡単だったよ、今回の仕事は。社長がこんなことやってるなんてバレたら困るからって防犯が軽すぎ。警備会社の社長やってるのにね」

「お、お前こそ犯罪じゃないか!」

男は大声で叫ぶ。

「叫んでも誰も来ないよ。だって建物の中にあなたしか居ないの確認して来たし。あなたもバレたくないからこんな時間にここに居るんでしょ?」

ふふっといつも通り口だけを動かして笑う。しかしその顔からは心情は分からない。

「そんな大金賭けて、負けた金持ちに恨み買うなんて分かりきってたことでしょ。ほんとお馬鹿さんだね。はい、『ウォータリングロック』」

 もう一つ水の塊を男の口に目掛けて打ち出す。塊は今度は男の口から体内に入っていく。男は必死にもがき、のたうちまわる。その間にプリシラは男が落とした書類を拾い上げると、ペラペラとめくり、一部を取り出した。

「こんなに稼いでいたんだね、思った以上だよ。……それとこれは貰っていくね。私が欲しいの、もしかしたらお客さんの中に探している人がいるかもしれないから」

そう言ってプリシラは部屋を後にした。

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