Jewel
望月玲
第一話 リクという少年、ハルという少女
『お誕生日、おめでとう!!!』
「ありがとう、みんな」
スマホから聞こえてくる家族のお祝いメッセージに、俺は照れながらもお礼を言う。
『リクももう16歳!大きくなったもんだ』
「でも成人はまだ先だよ」
『まぁあと4年なんてあっという間さ。今日は直接祝えないけど、リクが帰ってきた時にまたどこか家族で食べに行こうな』
「わかった。帰るときにまた連絡するよ」
『お兄ちゃん、なるべく早めに帰ってきてね』
「うん。俺が帰ってくるまで良い子にしてるんだぞ。今日はありがと。おやすみなさい」
『おやすみなさい』
ピロン。
「あー俺ももう16歳かー」
16歳って言っても、まだ酒も飲めないし車も運転できないんだけどな。あーあ、早く大人になって自由になりてぇなぁ。ま、一人暮らしでも十分自由か。もう10時だし、風呂入って寝るか。
チリリリリリ。
「あぁ。もう朝か。ってか今日休みじゃん。こんな時間にアラームセットするなよなー」
今日は学校が受験日だから在校生は休日。こんな日はゆっくり二度寝するかゆったりとした朝食を楽しむか。だめだ、布団には勝てん。寝る。
ピンポーン。
はぁ?なんだよ今から寝ようと思ってたのに。
「はーい」
『宅配便です』
「お疲れ様です」
あれ?俺なんか頼んだっけ?というかハンコどこに置いたっけ?まぁサインでいいや。
「こちらにサインをお願いします」
「はい。いつもありがとうございます」
ん?小さいな。バレンタインの時に見る小さいチョコの箱くらいしかないぞ。それとも本当にチョコなのか?装飾品?とりあえず開けてみよう。
「なんだこれ。ただのアクセじゃねーか。こんなもん頼んだ覚えねーぞ」
中に入っている赤いこれは、イヤリングか?俺べつにアクセサリー身につけたりしないんだけど。ん?一緒に紙が入ってるな。
-夏目リク様
この度はお誕生日おめでとうございます。
ささやかながら、私からプレゼントをお送りいたします。
お気に召していただけると嬉しいです。
P.S. 今日からお世話になります。
ハル
なるほど、誰かからの誕生日プレゼントってことか。ハル?知り合いにいたっけな?クラスメイトにハルなんて名前の人はいないし、というかこんな丁寧に送ってくるクラスメイトいたら引くわ!っていうか今日からお世話になりますって何だ。そんな話聞いてないし知らない人怖いよ。
ピンポーン。
え、もしかして。ハルさんか?
「はーい」
『お初にお目にかかります。私、ハルと申します。今日からお世話になります。よろしくお願いします』
やっぱり!っていうか女性なの!?綺麗な声に白い髪……いやいや!それよりも今はどういうことか確かめないと!
「ぇ、ええと…どういうことでしょうか」
『すみません、本当はもっと前もって伝えるべきだったのですが、時間がなく、このようになってしまいました』
「あのー…お世話になる、とはどういうことでしょうか」
『話すと長くなってしまいますので、恐縮ですが一度上げていただけないでしょうか』
ちょっと待って!誰かもわからないのに家に上げるの怖い!
「…殺さない?」
『…はい?』
「家に入った瞬間に俺の首にナイフ突きつけたり…」
『しませんよ。誰がそんなことする前にインターホンで会話しますか』
お、おう。それもそうだな。
「わかった。今開けるから、ちょっと待っててください」
仕方ない、聞くこともいっぱいあるし、ずっと寒い中外に立たせるのも気の毒だしな。
「お邪魔します」
「はい、靴を脱いだら、こちらへどうぞ」
とりあえずリビングのテーブルに座っていてもらおう。
朝ご飯まだだし、何か食べながらでもいいかな。
「あのー、俺朝ご飯まだなんですけど、ハルさんも何か食べますか?」
「いえいえそんな、お気になさらず」
一応カフェラテでも出しておくか。インスタントだけど。後はパン焼いて…
「お待たせしました」
「いえいえ。こちらこそありがとうございます」
インターホンでも十分伝わってきたけど、この人すっごい華奢で綺麗な白い髪だなぁ。漫画とかでよく見るエルフみたい。
「それで、いろいろ聞きたいことがあるんですけど」
「はい。答えられる範囲であればお答えいたします」
まぁまずは正体からだよな。
「あなたは誰ですか?」
「私の名前はハルと申します」
「どこから来たんですか?っていうかお世話になるってどういうことですか!?」
あっ、一つ一つ聞いていこうと思ったのに思わず聞いてしまった。
「どこから来たかは後で説明いたします。お世話になるというのは、恥ずかしながら、居候させていただく、という意味です」
「先ほど届いたあのイヤリングもあなたが送ったものですか?」
「そうです。その話を先にしましょうか」
続けてくれ、と促す。
「まずはそのイヤリングを一つ、左耳につけていただけますか?」
真紅色に輝くイヤリングを手に取り、左耳に付けてみる。っていうか俺、アクセサリーとかつけたことないんだけど!今時の陽キャはジャラジャラつけてるかもしれないけどさぁ!一応何となく想像しながら着けてみるか…
「そこのネジを緩めて、耳たぶを挟んでください」
あ、アクセ着け慣れてないのバレたな。まぁいいか。
「こ、こうか?」
「わぁ!やはりお似合いです!」
そ、そうなのか?っていうか想像よりも痛みはないんだな。
「ではそのまま、手を握ってみてください」
ん?どういうこと?手をグーにすればいいのか?
「そして力を込めたら、手をひらいてください」
グッと力を入れて、パッと開く!
ブワッ。
え?待って、今俺の手、燃えなかったか?
「そうです!…って、びっくりさせちゃいましたか?」
「びっくりした!え!今俺の手から火が出たんだけど!」
「あなたが今着けているイヤリングは火のイヤリングです。そのイヤリングを着けていると、火を生み出すことができるんです」
「……つまり?」
「火の魔法使い、といったところでしょうか」
ん?魔法?…ないない。こんな科学が進歩したこの世界に魔法や魔術なんてあるわけ。
「信じられませんか?」
「うん、信じられない。けど、自分の手から火が出たのは本当なんだよね?」
「はい。本当です。現実です」
「……ちょっと一回このイヤリング外していいかな」
一度落ち着くためにもこれは外しておこう。
「先ほどの質問の答えがまだでしたね」
「質問?」
なんて聞いたっけ?
「私がどこから来たか、です」
あー…今それどころじゃないくらいなんだけど。
「私は、妖精なんです。この世界とは違う世界からやってきました」
……ん?異世界から来たってことか?
「え?」
「リク様にお願いがあるのです!私の世界から流出してしまったアクセサリー達を集めて欲しいのです!そのために私は世界を移動し、あなたのもとにやってきたのです!」
……はぁ?なんかもうどうでもよくなってきちゃった。
Jewel 望月玲 @rei_1107
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