第26話 授業中の妄想はたいがいの黒歴史の材料である

 とにかく、本来の計画の意図から考えても次のターゲットを的確に定めることは急務だ。それも当然虹に頼るわけにはいかない。あくまで自分の目で、標的に相応しい人物を見定めるのだ。


 虹といえば、もう一つ。


 これからハーレムを構成するメンバーをどんどん増やしていくことが俺の目標であるわけだが、一人目である虹とそれ以降の間には、引き入れるための難しさに格段の違いがある。


 まず、新しい女の子が増えていくという俺の計画に対し、納得とはいかないまでもある程度目をつむってくれるような空気を作ることが大変だ。

 元からいた面子からすれば、信者もとい恋敵が増えていくということはあまり面白くはないはず。……というか俺のプライド的にそうなってくれると嬉しい。あんまりウェルカムウェルカムな雰囲気だと、それはハーレムじゃなくて、俺がただ単に遊ばれているということだろ。それは辛い。


 まあとにかく俺の希望的観測からすると、古参へのフォローは必須というわけだ。この点を虹はクリアしていると言えるので今回は問題ない。


 次に、新メンバーへの対策だ。

 俺の宗教ハーレム計画では、信仰心を利用することを考えているため、こちらに関してはあまり問題にならないとは思うのだが、それでも引き入れる時に注意しなくてはならないことはある。


 例えば、一定以上の信仰を得られていない状態の場合、ハーレムの存在はなるべく秘密にしておいた方が良いだろう。一般的な感覚で言えば、これはかなり邪道な恋愛である。露見することによって俺個人の印象が悪くなれば、計画の進行は難しくなるはずだ。


 他にも、独占欲が生じないか等、ハーレムの人数が増えるにつれバランスを取らなきゃいけない部分は増加していくだろう。常に信者たちの動向には目を光らせておかねばなるまい。


 まあでも? これ今のところ全部机上の空論なんですけどね? 正直に言ってこの妄想はかなり痛い部類に入ると思いますよ、自分でも。ええ。

 まずハーレムが完成することを疑っていないことが猛烈に痛い。そしてハーレム構成員が全員俺にぞっこんっていう前提で考えてるのも痛すぎる。いや、確かにそういう状態じゃなきゃハーレムとは言えないんだけどさ……だとしてもでしょ、これ。医者に診てもらったとしても「手遅れですね」って言われるだけじゃなく、逆に精神的苦痛を負わせて慰謝料求められるレベルでしょ。


 しかし、そんな恥ずかしい想像でも、ハーレム計画のためならば乗り越えなければならない。俺は本気でハーレムを創りたいし、モテモテという名の幻の怪奇現象を味わってみたいのだ。


 少し灰色さを増した空から発生した生温い風が、教室にじわりと広がる。


 人間の心は計算式のように求まるわけではないし、だからこそ信仰心も完璧ではない。そこへの対策をおろそかにするということは、ハーレム王への道を険しくするということだ。それどころか文字通りの意味で寝首を掻かれることになりかねない。


 だからこそ。

 やると決めたら徹底的に、本気で。


 手を抜けば、誰がイスカリオテのユダになるとも限らないのだ。

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