第8話
「どうする?」
剣道場を離れた私たち三人は、食堂にいた。
放課後の食堂は、食事こそはできないが自動販売機はあるので、生徒達の憩いの場になっていることが多い。
私たちの他にも、お喋りを楽しむ人達がいた。
葵さんが奢ってくれたジュースを飲み、ほっと一息ついていると、藤原君が気まずそう言った。
どうすると言われてもねぇ。
「連絡取ってみようか?」
誰に? とは聞かなかった。
わかっていたから。
「……藤原君、仲いいの?」
「だって去年も同じクラスなんだぜ。それに、いいやつだよ」
いいやつかどうかは今関係ない。
「呪いの竹刀はどうなったかって聞けばいいんだろ。一回電話してみる」
そう言って、彼はスマホを操作し始めた。
「誰に連絡を取るんだ?」
その間、葵さんが私に聞いてきた。
「さっき中村さんが仰っていた、竹刀を引き渡した陰陽師だって人です。私たち、同じクラスなんです」
「……本当にそんなのがいるのか?」
いるのよね、それが。
私も実際目にしたわけじゃあないから、本物なのかどうかはわからないけれど……
「ダメだ。電話に出ねぇ。メッセージだけ送っておくよ」
それなら仕方あるまい。
「……ていうか、九重に話を聞けばいいんじゃね?」
スマホをいじりながら、藤原君が言った。
言われてみればそうか。
「いや、駄目だ」
しかし、葵さんが許可しなかった。
「どうしてですか」
「今はあいつに話を聞けない。いや、聞かないほうがいい。……確証が得られるまでは」
確証?
何の確証だろう……
「……葵さん、何か気づいたことでも……」
「あ! 電話かかってきた! ……何だ、部長じゃん」
私の言葉を遮った藤原君。
一瞬でテンションが上がって下がった。
「はいはぁ~い」
残念そうな声で電話に出る。
部長……って言ってたわね……
一体何の用かしら。
「ええ~! 何で俺がぁ! しょうがないなぁ……。あ、助っ人も連れてっていいー?」
しばらく喋った後、「そいじゃあ後で~」と言って、彼は電話を置いた。
「……部長から?」
「そー。何か手伝ってほしいから部室に来いって」
手伝う?
「私も?」
「清原のことは何も言ってなかった。男手が欲しいって言ってたから、葵サン手伝ってよ」
助っ人というのは、葵さんのことだったのね。
葵さんは、何で俺が……という顔をしている。
「手伝うついでに部長に聞いてみればいいんだよ」
「聞いてみるって……」
「剣道部のこと」
……藤原君。何も考えていないようで、意外と先を見ているわね。
「花ちゃん部長なら知ってるんじゃないかな。そういう不思議系な話、好きでしょ」
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