第6話

 園田さんにつれられてやって来たのは、剣道場。

 ……うちの学校の剣道場だ。

 つまり、園田さんは月之の生徒が犯人だと言うのだ。

「……何で隠れなきゃいけないんですか?」

「シッ! 静かに! 犯人に見つかってしまうだろう!」

 茂みに隠れる意味がわからなくて聞いたが、怒られてしまった。

「見ろ。あそこに通り魔がいる……!」

 ……剣道部が練習しているようにしか見えませんけど?

「どいつだよ」

 葵さんの冷ややかな声に、慌てて指差す園田さん。

「あれだよ……あのポニーテールの……一番前に出て指導している……」

 ……剣道部主将の中村千代子なかむらちよこさんじゃないの。

 女主将ってこともあるし、何より美人でさらに大会で優勝経験もあるような実力者だから、これまた有名な人である。

 そんな中村さんが……通り魔ですって?

 黒髪という特徴は一致しているけど……

「彼女が通り魔という根拠は?」

 一宮君の視線と声も冷ややかだ。

「見てわからないのか!? 特徴は見事に一致している! そして! 彼女は剣道部の主将を務めるほどの実力のある人物だ! 容疑者としては有力だとは思わないか!」

「それだけの理由で疑うのか……」

 一宮君が呆れるのも無理はない。

 証拠もないし、動機もわからない。

 そんな状態で疑われる人が気の毒だ。

「さらに!!」

 テレビショッピングのようなノリで、要素が追加される。

「剣道部には、呪いの竹刀なる物があるそうだ……」

「……何だ、それ」

 葵さんは顔をしかめるが、その話、私は知っている。

「心の弱い者はそれを持つと、あっという間に精神を支配されてしまう……」

「ダウト」

 葵さんが即座に言った。

「う、嘘じゃない! 実際過去に呪いの竹刀を手にした者が、人が変わったように暴れだしたという事件があるんだ!」

「その女主将も竹刀に精神を乗っ取られて、通り魔になったって? ダウトダウト」

 葵さんは信じていないようだけど、本当にそういう話はある。

 真偽はわからないけどね。

 それにしても疑う材料としては、非常に決め手に欠ける話ね……

「……詰めが甘い」

 ボソッと言った葵さんの言葉に、ムッとした表情になる園田さん。

「だったら今夜! 確かめようじゃないか!」

 運良く今日は、満月。

 通り魔が現れると言われている日。

 ……ちょっとタイミングが良すぎない?

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