#03 Probationem-証-
リベロが言葉を発すると、下級悪魔たちを上から囲むように複数の黒い短剣が浮かび上がる。スっと手を振りかざすと、それを合図に一斉に下級悪魔の頭上に降りかかる。取り巻きの下っ端悪魔たちにも刺さり、小屋中に絶叫が響き渡る。
「ぐわあああああ!!!!」
「な、なんだこれはあああ!!痛いいいい!!!!」
「アンタの攻撃も使ってあげようか。――ニグルムピーワ」
しゅるしゅると黒い霧がリベロの手のひらに集中する。すると、下級悪魔が使用していた黒玉も空中に突如として出現し、短剣が刺さり重傷を負っている下級悪魔たちにさらに追い打ちをかける。
「貴様あああ!!なんだこの力があああ!!」
先ほどまで粋がっていた下級悪魔がついに膝を折ってしまう。取り巻きの下っ端悪魔たちはリベロには勝てないと一斉に逃げ出してしまう。
一方置いてけぼりのフィニスは、予想だにしない展開でただただ見ているだけだった。いつの間にか目から滴が落ちなくなっていた。あの少女のような悪魔が己を助けてくれたのか、それとも、自分を巡って餌の取り合いをしているのか。真意はわからない。ただ、あの悪魔を見ていると、どこか懐かしい気持ちになる。脳裏に人影のようなものが浮かんでくるが、それは霧が晴れるようにさっと消えてしまう。あの猫のような赤い瞳に見つめられると、どこか胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。
すると、突然あの下級悪魔が力を解放し、その悪魔を取り囲むようにおどろおどろしい殺気が立ちこめる。
「クソックソックソッ!!ここにいる全員皆殺しだああああ!!!!」
「何なのこれは!?ちょっと、そこのちびっ子魔女!何ボサっと座ってるの!!早く逃げなさい!!」
突然フィニスはリベロに話しかけられ、ビクっと肩を震わせる。激昂した下級悪魔が自暴自棄になって夥しい量の魔力を集め始め、何をするかわからない。しかし、逃げようにもこの状況は非常に宜しくないと肌で感じているために、身体が拒否反応を示して泣き出してしまう。
「逃げろって言われても……足が動かないよぉ……ひっく……」
「アンタ魔女でしょ!?泣いている場合じゃない!!死にたいの!?」
なぜいつもこうなのだろうか。己が一体何をしたのだというのか。なぜこんなにも世界から見放されているのだろう。両親を悪魔に殺され、ずっと悪魔から逃げるために魔界を放浪していた。生きるために物乞いを行い、誇り高き魔法を悪事を働くために使ったりもした。生きることがこんなにも辛いものとは。世界から見捨てられているこんな自分にせめて、他の魔女のために役立つことがしたい。己が生きた証として。
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