#02 Concursio-出会い-
「こ、来ないで!!やめて!!」
「来ないで?キャハハッ!んなわけねーだろ!こっちは腹を空かしてんだからさぁ!!小さい魔女だが、小腹くらいは満たされるだろ。なんせ、魔界は空前の魔力不足だからよォ」
「……ひっく……お願い……やめて……助けて……」
フィニスは声を震わせて泣きじゃくりながら懇願する。しゃくり上げ、涙で視界が見にくくなっている。フィニスが一歩下がると、悪魔たちは一歩進む。まるで狩りを楽しむようだった。
「さぁ、祈りは済んだか?魔女ちゃん?」
「いや……いや……」
「ぴーぴー喚くな。そんな顔もそそるんだがな!」
悪魔たちがフィニスに手を伸ばそうとした瞬間、双方の間に紫の玉が打ち込まれ、しゅーっと風を切る音と共に強い光がフィニスたちを襲う。
「な、何?」
「クソッまさか!!ぐああああああ!!」
悪魔が甲高い声を上げてフィニスから離れる。そして、みるみるうちに身体中に刀傷のようなものが切り刻まれ、そこからぷしゅぷしゅと黒い血が辺りを汚していく。下っ端の悪魔たちも突然のことで状況がわからず、右往左往している。
「だ、誰だ!俺様に……!!」
「この攻撃を避けられないんじゃ、アンタ悪魔として弱いんじゃない?悪魔廃業したら?」
小屋の外から一人の少女の声がする。少し低く落ち着いた声で傷らだけの悪魔を小馬鹿にしている。肩上辺りに切り揃えられた黒髪、両サイドにある青髪が特徴的だ。黒い羽根と尻尾を靡かせ、赤く釣り上がった猫目がフィニスと悪魔たちを射貫く。
「そんな子どもを食べて何になる?弱い者虐め?これだから下級悪魔は」
「リベロ!!最近、中級悪魔に昇進したからと言って調子に乗ってないか!?」
「調子に乗るも何も、これが実力の差でしょ。だからアンタはいつまで経っても下級悪魔なんだよ」
「言いたいこと言いやがって!!お前を食ってもいいんだぞ!!」
リベロと呼ばれた少女悪魔は、ふぅん、やれるものならやってみな、と激昂している悪魔に対して更に挑発する。どうやら、リベロの方が格上の悪魔であるようで、下級悪魔に対してまともに取り合っていない。現に腕組みしながら鬱陶しそうにしている。
「殺す殺す!!殺して食ってやる!!焼かれろ!!ニグルムピーワ!!」
下級悪魔は聞き慣れない単語を発すると手のひらで黒玉を多数作り出し、それをリベロ目がけて剛速球を投げる。しかし、それはすべて避けられる。時折、小屋の中にある木材に当たり、しゅううと煙を立てながら溶け始めた。次々と投げ込まれる黒玉に対してリベロは余裕の表情で躱し、隙が無い。リベロには黒玉の軌道がしっかりと見えているようで、ふわりと舞う黒髪ですら黒玉に掠らない。
「馬鹿の一つ覚えでそれしか出来ないの?――ノワークラ」
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