第18話®️


「まって」


私は今まで黙って彼の話を聞いていたが、急に彼の話を遮った。

どうしても確認したくなったのだ。


彼の話はまるで作り話のようだが、それは真実なのだと解る。

彼を何度スキャンしても、嘘のサインが出てこない。

彼は真実しか話していないのだ。


私は彼の話しを聞きながら、きっと私の町も危険なのだろうと悟っていた。


もしもその蠢く影がここにも来てしまったら…彼が経験した事が、この町でも起きてしまうとしたら…そう考えると、背筋が冷たくなった。


「あなたがここに来た理由、今までの話しの流れでなんとなく解るわ…」


その蠢く影に町中の人が侵入されて、そして、何かが起こったのだろう。

でも私は、その何かを聞く前に確認しておきたかった。


「あなたがここにいるという事はトラベルをして来たと言うことよね…でも…見る限り、あなたは1人のようだけど…その少女はどこにいるの?」


彼は私の顔を見た瞬間、眉尻を下げ、一瞬情けない顔をした。


「…… 連れて来れなかったんだ…」


そう言った途端、彼の大きな目から、涙が玉のようになって溢れた。

彼は顔を手で覆い、肩を震わせた。


彼はこの数日で、私が想像出来ないほどの経験をし、自分が生まれ育った町や、家族や友人を置いて、いろんな感情を抱えながらここまでやって来たのだ。

そしてここに着いた瞬間、偶然にも私を見つけ、私達の町が彼の町の二の舞にならないように今、私に伝えてくれている。


どんなに辛かったろう…どんなに悔しかったろう…どんなに不安だったろう…どんなに…


年上とは言え、私とそんなに年が違わない彼が、1人で知らない町にやってきて…それだけでも不安であろう。

しかしそれ以上に、彼の経験してきた事はあまりにも壮絶過ぎる。


さっきまで話してくれていた時の彼は、淡々と状況を説明し、私よりもかなり年上なのではないかと思えるほど落ち着いていたように感じたが、今、目の前で泣いている彼は、肩をすぼめ、背中を丸くし、ひと回り小さく見えた。


彼のその小さく見える背中にそっと手を当てると、私も自然と涙が流れ、彼と一緒に泣いていた。



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