第17話®️

朝礼が終わり、1.2時間目の授業も終わった。

その間の休憩時間は、あの大きな木の下で少女と会った。

やはり少女の担任も、他の先生も、クラスメイトも皆、侵入を受けているようだった。

なぜなら、先生も生徒も、少女が何をしても見向きもしないからだ。


授業中、少女は勇気を振り絞って大きな声で歌ってみたが、誰も少女を見なかった。

少女は昨日、この学校には居なかったのだから当然と言えば当然だが…


やはり、この学校にいる大勢の中でも、侵入を受けていないのは自分達だけなのではないか…

2人は不安に駆られた。


「次の時間はトラベルの授業なんだ」

彼は唐突に言った。

「僕は必ず次の授業でトラベルができるようにする」

彼は力強く少女を見つめ言った。

そして少女から目を逸らし、正面を見た。

「もしも…最悪のことが起こったら…そんな事考えたくないけど…でも…もしも…その時が来たら…逃げる手段は必要だと思う…その時のために…絶対に…」

彼は自分に言い聞かせるように言った。


「私…まだトラベルを習ってないの…お姉ちゃんはできるけど…お父さんやお母さんにはまだ早いって言われて…」少女は抱えた膝の上におでこを乗せ、うつむきながら言った。


彼は少女の肩に手を置き「大丈夫だよ」と微笑んだ。


「絶対に僕がトラベルを成功させて、その時が来たら君も一緒に連れてトラベルするから」

少女は顔を上げ「そんな事までできるの?」と驚きながら聞いた。


「僕達の年齢でそれが出来る人は確かに少ない…でも、出来る人がいるんだ。僕にだって出来ない訳がない!」彼は少女を真っ直ぐ見つめた。


少女はしばらく黙って彼の顔を見つめていた。


「私…あなたのトラベルの授業を受けるわ!一緒に受ける!どっちにしたって私は居ても居ないようなものなんだから、私がどこで何をしていようが誰にも迷惑はかけないもの」

「だから私にもトラベルを教えて」

少女は力強く彼の顔を見上げ、揺るぎない口調でそう言った。


その時、彼のクラスメイトがトラベルの授業を受けるため、ぞろぞろとグラウンドに出て来た。


彼は少女の顔を見つめ「よし!行こう」と手を差し出した。


少女はにっこり微笑み、彼の手を取り立ち上がった。


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