第14話®️

祖母は二階に上がって来て、しゃがみ込んでいる少女の両肩を掴み「ここは危険だわ。何かおかしな事が起こっているのよ。あなたまで変な事に巻き込まれる前にもう一度、じじとばばの家に帰ろう」と言った。


少女は確かに自分も巻き込まれるかも知れないと思ったが、自分を心配してくれていた心優しい姉があんなことになり、姉がどうなるか分からないまま自分だけが祖父母の家に戻る事はできないと思った。


少女は「おばあちゃん、私はここに残るから、おじいちゃんとおばあちゃんは帰って」と言ったが、祖父母は絶対にダメだと言い、少女はお姉ちゃんが心配だからと伝え続けたが、祖父母は納得しなかった。


少女が今日の夜の電車でお姉ちゃんと一緒に祖父母の家に行くからと伝えると、祖父母は顔を見合わせ、しばらく少女の顔を見つめると、絶対だよと言い、何か言いたげではあったがしぶしぶ納得してくれた。


そして、それでも心配だからと、祖父母は車で学校の近くまで送ってくれたのだと言う。


彼は少女の話から新たな情報を得たと思った。


さっき少女は、蠢く影に侵入された人、この場合、少女の姉だ。

その姉の動きを止めると、姉の目に蠢く黒い影が見えたと言った。

昨日と同じ動きが妨げられると、何故かは解らないが、蠢く影が出現するのだろう。


そしてこれは、少女と出会った事により気づいた事だが、恐らく侵入を受けている人は存在が薄くなる。


どう表現すれば良いのだろう…その人達の体は少し透けて見えると言うふうに表現するのが近いか…

別に透けて向こう側が見える訳ではないが、なんだかそう感じさせるように、薄らとボヤけて見えるのだ。


あの蠢く影については、まだまだ解らない事だらけだが、しかし、少女との出会いによって、少しだけ前進したように感じた。


彼は昨夜から今に至るまでの自分の経験を少女に話した。


少女は、自分が祖父母の家で夜を過ごしている間に、この町で起こっていたこ恐ろしい出来事にショックを受け泣いていた。


しばらくして「じゃあ…お父さんも、お母さんも…お姉ちゃんも…その影に奪われてしまったと言うの?」

「どうなるの…私も同じようになるの?」

「影が危険なの?影が動くなんて…人の体に入り込むなんて…先生やみんなは?…どうなるの…」

少女はひくひくと泣きながら、弱々しい声で彼に聞いた。


「まだ解らない…」

「ただ、あの蠢く影が僕の母や弟の中に侵入するのを僕は見たし、あの蠢く影に侵入されたらどうなるのかも見てきた」

「悲しい事だけど…君の話を聞く限り、君の家族も…僕の家族と同じ事になっていると思う…」

少女は膝を抱えたまま涙を流し、空な目で、ただなんとなく前を見ているようだった。

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