第11話®️
門をくぐると、授業を担当してくれている先生や見知った顔の生徒がたくさんいた。
みな挨拶しあったり話したりしながら各々の教室へと向かって行く。
彼はその流れのまま無気力に進んだ。
そうだ…僕は昨日、今日より遅く家を出て、みなが登校している時間よりも少し遅く学校に着いたのだった。
周りを見渡し、自分がまだ着いていなかった昨日の朝の学校はこんな感じだったのか…
彼は、灰色のねっとりした気持ちのまま、ぼんやりと考えながら歩いた。
その時、きょろきょろと周りの様子を伺いながら歩いている少女が目に入った。
その少女はかなり警戒しているようだった。
彼の目に映る少女は周りの人達とは全くと言っていい程、雰囲気が違っていた。
いや、雰囲気だけではない、少女を見るまでは気付かなかったが、周りの連中とは明らかに違う。
どうゆう事だろう…少女の姿は、周りの人達よりもハッキリと彼の目に写った。
少女の姿に比べると、周りの人達はぼんやりと影のように薄れて見えたのだ。
少女はびくびくと警戒し、背中を丸めながら小さくなって歩いていた。
普段なら、目に留まることもないような…よく言えば、目に映る風景に上手く溶けこんでいるようなタイプの少女が、今は力強く、生きてると感じさせるエネルギーを発していた。
彼には解った。
自分と同じだ!
あの子は侵入を受けていない!
そう思った時、こちらを見た少女とぱちっと目が合った。
瞬時に2人はお互いの目の中を探り合い、瞬間、少女は何かに気付いたような表情を見せた。
彼は即座に頷いてみせた。
少女の顔がほんのわずかだが、安心したように緩んだ。
お互いが「いた!」と安堵した瞬間だった。
彼は少女に目配せをし、顔をちょいちょいと傾けながら「あっちへ行こう」と、無言で誘った。
それを感じ取った少女が頷き、きょろきょろと辺りに眼をやり、俯きながら歩いてきた。
間違いない!
僕と同じだ!
いた!いた!いたんだ!
彼は、俯きながらこちらに向かってくる少女の姿を凝視しながら心の中で叫んでいた。
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