第149話 ふたり催眠
「「おはようございます。先輩」」
両側からそう囁かれて、俺は反射的に目を見開いて飛び起きた。そんな反応が面白かったのか、目の前に座った後輩の詩音が2人で笑った。……2人で。
「え?何?これはどういうこと?」
俺がそう言うと、詩音たちは顔を見合わせてから、こちらに迫ってきて言う。
「2人になったら便利かなって思ったんです」
「だって、2人なら右からも左からもいっぺんに先輩を気持ちよくできるんですよ?」
「2人になった目的じゃなくて、どうやって2人になったか知りたいんだけど……」
額を押さえながら俺が訊ねると、左右の詩音が交互に言う。
「それを説明するのは、少し難しいかもしれません」
「今の先輩には分からないかもしれません。だって先輩は——」
「「催眠状態だから」」
左右から同時に言われて、全身から力がガクッと抜ける。まぶたが異常に重くなって、ベッドに倒れ込む。両側からくすくすと笑う声が聞こえる。
「何も考えなくていいんですよ。リラックスしていてください」
「いっぱい気持ちよくしてあげますからね。先輩はただ私たちに身体を委ねてくれれば」
「「大丈夫」」
頭の中で声が反響して、身体をビリビリとしびれさせる。
「じゃあ先輩。私が服を脱がせてあげます」
そう言って詩音の片方が起き上がる。
「その間、私は先輩にキスしててあげますね」
そう言ってもう一方の詩音は俺に寄り添うように横になって、頬に手を添えて唇に唇を押し付けた。
「んっ……。先輩、気持ちいい……」
温かい舌で口の内側をなぞりながら、うっとりとした声を詩音が漏らす。その間に、詩音の細い指がぷちん、ぷちんとボタンを外し、シャツをはだけさせ、ズボンを下ろす。
「しぇんはい……」
とろとろになった声で言う詩音に、服を脱いでいた方の詩音が少し不満そうに言う。
「もう。私ばっかり気持ちよくなってずるい。私も先輩とキスする」
そう言って、俺と詩音の間に割って入るように唇を押し付ける。3人分の舌が絡み合う。先にキスをしていた詩音が少し呆れたように言う。
「そんなこと言って、私なんかちゃっかり服脱いでるじゃん。私も脱ぐから、抜け駆けしちゃダメだからね?」
「分かってるよ」
そう言って、1人分の体重が身体から離れて、残った詩音が俺の上に覆い被さるような体勢になってキスをする。胸に押し付けられた詩音の胸の感触が、柔らかな膨らみの頂上に硬いもののある感触がありありと感じられる。
「先輩……おっぱいを揉んでください……」
詩音がそう言うと、俺の両手が勝手に詩音の腰から脇腹をなぞるように撫でて、詩音の胸を包むように掴む。
「先輩の好きなように揉んでいいですよ」
その言葉に、俺の両手は指を柔らかく沈み込ませる。
「んっ、あん」
抑えるように小さく喘ぎ声を漏らしながら、詩音が身体の上で震えるのを感じる。そうしていると、耳に息を吹きかけるように詩音が囁く。
「先輩、私ばっかり気持ちよくして不公平ですよ」
不満そうに言う詩音に、詩音が熱い息の混ざった声で宥めるように言う。
「仕方ないでしょ。先輩は私のおっぱいが大好きなんだから。ね?先輩」
耳元で頬を膨らませる気配がして、詩音が身体をぴったりと押し付けるように抱きついてきた。それから俺と詩音の間に腕を滑り込ませて、指先で軽く俺の乳首を弾く。思わず身体がビクッと震えてしまう。
「先輩は、胸を触るだけじゃなくて、触られるのも好きなんですよね?」
耳たぶを咥えながら、笑いを含んだ声で詩音が言う。
「どっちも私ですから、先輩の気持ちいいところは全部知ってるんです。いっぱい気持ちよくしてあげますね」
「それだけじゃなくて、私たちも両方いっぱい気持ちよくしてもらいますから」
「「覚悟してくださいね?」」
——
「あ、先輩起きました?」
まだ少しふわふわする頭を振りながら俺が上体を起こすと、ローテーブル前に座っていた詩音がこちらを振り向いて言った。もう服は着て制服姿になっている。
「ふふっ。いっぱい気持ちよくなっちゃいましたね?」
少し顔を赤くしながら、いたずらっぽく笑って詩音が言う。その言葉に、意識を失う前に見た光景がフラッシュバックして鼓動が速くなる。
「あれは、どういう催眠だったんだ?」
へそより下に布団をかけたまま詩音の方を向いて訊ねる。詩音もずいぶん暗示をかけるのが上手くなったのだと思うけれど、あそこまで現実感を持って2人になる催眠というのは思いつかない。
「催眠?なんのことです?」
詩音が首を傾げる。予期しない返答に小さく息を呑むと、部屋のドアがかちゃっと開いた。
「先輩、起きてますか〜?紅茶を淹れてきましたよ〜」
そう言いながら、ポットとカップをお盆に乗せた詩音が部屋に入ってくる。
「どういうことこれ!?」
パチン
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