第144話 こたつ催眠2
パァン
「こたつですね〜」
「こたつだな」
のんびりとした口調で言う後輩の詩音に、俺は応えた。詩音の部屋に出されたこたつで、向かい合って座っている。詩音は天板の上に頬をぺったりとつけて寝そべっている。みかんに手を伸ばしながら、詩音は俺の顔を見上げるようにして言った。
「先輩、顔が赤いのはこたつのせいだけじゃありませんね?前にあった『こたつでのこと』を思い出してるんでしょ?」
からかうようなその言葉に、俺は目を丸くしながら口元を手で覆った。
「ばっ、赤くなんてなってないからな!」
「どうだか。先輩の妄想力は凄まじいですからね」
ふるふると首を横に振る詩音に、俺はため息をついて自分のみかんをつまむ。
「何か、甘いものだけじゃなくてしょっぱいものも食べたくなってきましたね。お煎餅でも持ってきますか。ついでに飲み物も」
そう言って詩音は立ち上がって、ドアを出て階段を降りていった。
「やけにすんなりこたつから出たような……」
普通、どっちが出るかで一悶着あるパターンのような気がするけれど。まあ、俺が出るわけにもいかないから当然といえば当然なんだけど。
「ん?」
思考にひとつ引っかかりを覚えて首を傾げる。前は確か俺がこたつから出ることになったはず。その時にかけた催眠は確か——
「戻りましたよ〜」
ドアを開けて戻ってきた詩音にビクッとして思わず目を逸らす。
「ん?先輩?もしかして……またエッチなこと考えてました?」
「考えてないぞ!?」
ひっくり返りかける声で反論する。嘘はついていないはずだ。この前の事を思い出していた思考は、まだへその高さまでしか進んでいなかったのだから。
「ん〜?ほんとうですかね?」
そう言って詩音は持っていた煎餅の乗ったお盆をこたつの上に乗せて、俺の隣に座った。それからこたつ布団の中に手を滑りこませて、あぐらをかいた俺の内腿を細い指で撫でる。
「ほんとうにエッチなことを考えてなかったのか、確かめてもいいんですよ?」
ぞくぞくとした感触を強く目をつぶって耐える。そうしていると、詩音は身を乗り出して俺の首筋にキスをした。
「今エッチなこと考えてるの、詩音の方だろ」
声をわずかに震えさせながら反論すると、詩音は俺の耳元で囁いた。
「先輩が悪いんですよ?私の前でそんなエッチな格好をしてるから」
言いがかりにもほどがあるだろう。
「仕方ないだろ!男がこたつに入る時は裸にならなきゃいけないんだから!」
パチン
「あ」
指パッチンで催眠が解けて、唖然とした隙をついて詩音がのしかかるように俺を押し倒す。
「ふふ、やっぱり。先輩、もうカチカチになってますよ?」
その言葉に、俺は改めて赤くなる。逃げようにも、服は全部こたつの中だ。
「俺だって、上は脱がさなかったのに」
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